※本稿は、鈴木眞理『仮説起点の営業論』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
数をこなしても成果が出ない3つの理由
「顧客、状況に合わせた提案ができる営業になる必要があるのか?」
営業職の方のなかには普段からそのように疑問を持たれている人がいるかもしれません。あるいは、こう考える人もいると思います。
「型通りの提案しかできなくても、数をこなして成果が出るならそれでいいのではないか?」
営業の存在価値が売上を増やすだけだととらえ、数をこなすだけで売上が増えるのであれば間違いではありません。しかし近年、3つの理由からそれは難しくなっていると感じています。
1つ目の理由として、世の中の課題が複雑化してきており型通りに数をこなすだけでは、売上を上げること自体が難しくなってきています。
2つ目の理由としては、テクノロジーの進化によって、型通りに説明して数をこなすだけであれば、人による営業である必要がなくなってきています。
3つ目の理由としては、競合間でシェアを取り合う限られた市場のなかでは、顧客への提供価値を増やさずに売上だけを増やそうとしても無理が生じ、様々な市場が成熟している現代は魅力的な市場にはすぐに競合が参入してくるからです。
営業の存在意義は「介在価値」
そもそも、読者のみなさんは営業の存在意義についてじっくり考えたことはありますか?
様々な物がインターネットを通して人を介することなく直接買えるようになり、ずいぶん前から営業不要論も出てきています。私も営業である以上、自分も含めた営業の存在意義が何なのかをよく考えます。
私は営業にとっての存在意義とは“介在価値”をどれだけ高められるかだと思っています。
作られたプロダクトをそのまま提供し、顧客に使ってもらうだけであれば、営業の介在価値はゼロです。ウェブサイトからそのまま注文してもらったほうが早いと思います。
かつて私が在籍していたキーエンスでは付加価値という言葉がよく使われますが、介在価値とは「営業が生み出す付加価値」と読み替えることができるものと考えてください。まずここで付加価値とは何かについて改めて考えてみましょう。岩波書店の『広辞苑 第七版』にはこのように記述されています。
「生産段階で新たに付け加えた価値。生産額から原材料費などの中間投入物の額を控除したもので、人件費・利潤・利子・地代・家賃などに分配する。」