「ポジティブ思考」よりも「別の可能性」を考えてみる

悲観的になっている患者さんのお話を聞くとき、私は「そういう考え方もありますが、そうとも限りませんよね」と、別の視点を持つようにアプローチしていきます。

この「別の視点を持つ」というアプローチは、私が精神科の治療で行っている「認知療法」の基本的な考えの1つです。

認知療法とは、本人が自分の思考の(かたよ)りを「認知」することによって、うつ病などの症状の改善を目指す療法です。この療法を行うことで、ネガティブ思考やマイナス思考など、否定的な考え方のクセを変えていくことができます。

和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)
和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)

たとえば、定年退職後に、「自分は必要とされていない存在だ」とネガティブに捉えると、思考が悪い方向に進み、不安が強くなっていきます。

ただ、ネガティブ思考に陥っているとき、「もっとポジティブに考えましょう」といわれても、そううまく切り替えられません。

そこで大切になるのが、「別の可能性を考える」ことです。

すべての物事には二面性があります。一見すると悪い出来事も、別の見方をするとよいことが必ずあります。

たとえば、「仕事が生きがいだったのに、定年を迎えてしまった」と思ったとき、「これからは好き勝手に生きていける」というよい面を見つけられるかもしれません。

このように、「悪い面」の裏に隠れた「よい面」を見つけられると、心がフッと軽くなります。ぜひ、取り入れてみてください。

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