心理学者がアレンジしたPOB

準備とは、心構え、気分、影響を及ぼすものについて、事前に配慮することだ。人と交わる前に意識的に努力して、心のなかの雑念や気が散るものを取り除こう。よく知らない人であっても、これから会う相手のことを考えよう。あなたと過ごす時間で、相手にどんな気持ちになってほしいか? 会話を通して相手にどんな収穫を得てほしいか?

次に、自分の気分を調べてみよう。興奮している? 穏やか? ナーバスになっている? 直前の会話のときの感情を引きずったままだと、思考や判断力が鈍ることがあるので、感情をできるだけクリアにしてから、次のミーティングなり会話なりに向かおう。

最後に、あなたの物腰や表情が相手にどんな影響を与えるか過敏なほど意識しよう。誰もが相手の機嫌を巧みに読み取れるわけではない。あなたがいつも疲れたような表情を浮かべていると、相手はすぐにこの人は退屈しているか、あるいは腹を立てているのかもしれないと誤解するだろう。

関心は、人に対応したときのあなたの態度から簡単に伝わる。人と直接会うときは、相手がやって来るまで机の前に座っていてはいけない。携帯電話の画面を見続けて、相手を待たせてはいけないし、電子メールが来たらすぐにわかるような姿勢を取ってもいけない。

携帯電話は視界に入らない場所に置いておこう。すぐ手の届くところに携帯電話を置いたまま会話をしている人が実に多い。たとえ画面を下にして置いていても、通知が入り次第会話が中断しそうだと相手は考える。あなたの注意を引こうと携帯電話と争っていると相手に思わせてはいけない。あなたにとって自分は関心を向けて視線を合わせるほど重要な人間ではないと、相手が感じるようではいけないということだ。

「あなたに集中する」ことを心がけよう

ネットワーク上の世界では画面越しで人と接するが、ここでも対面のときと同じぐらい注意を向けることが重要だ。オンライン上で会話やミーティングをするとき、わたしは絶対に携帯電話の画面を見ない。いつも一人ひとりの顔を見て話すし、必要であればギャラリービューのページを何度もめくって、たくさんの顔を確認している。画面ではなく、参加者全員に集中していることを伝えるためだ。

人と接する前に考えてほしい最後の要素は振る舞いだ。集中力を維持しやすい姿勢を取りながら、あなたの集中力が1カ所に向けられていると示唆することだ。相手の目を見つめることが重要なのはもちろんのこと、姿勢とジェスチャーも大切だ。相手が居心地悪そうにするかナーバスになっていたら、どうやって気を楽にさせるか? 緊張感を和らげたいときは、ミラーリングという戦略がある。目の前にいる人のジェスチャーや姿勢をこっそりまねると、信頼関係を築きやすい雰囲気を作り出せる。

ジョン・アメイチ『巨人の約束 リーダーシップに必要な14の教え』(東洋館出版社)
ジョン・アメイチ『巨人の約束 リーダーシップに必要な14の教え』(東洋館出版社)

働き方がより柔軟にシフトしていくなかで、オンライン上での振る舞い方を変えよう――笑みを浮かべる時間をもう少し長くし、うなずき、首を振ろう。そうすれば人々は画面に並んだたくさんの無表情な顔のなかで、あなたが喜んだり、同意したり、異論を唱えているのに気づくだろう。

準備、関心、振る舞い――これは、人に接して話すたびに耳の奥でささやき続けてほしいマントラだ。当たり前すぎてばかばかしくなるかもしれない。あるいは、自分は仕事ができて、長年この仕事に従事していて同僚たちを熟知しているから、そんなに注意して熟慮する必要はないと思うかもしれない。だが、その考えがあだとなる場合もある。有能であるがゆえに集中力を奪われることが多々ある。周囲の人やプロセスに詳しいと、自己満足に陥りやすくなる。

「POB――あなたに集中する」――それを毎回心がけよう。

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