何でも質問していいというわけではない

大勢の人たちから時間を割いてほしいとの要望が来て、やるべき仕事に集中できない場合は、チーム内の互助体制を強化する必要があるだろう――特定の人との時間を減らすためではなく、全員のために必要な時間を割くためだ。そのためには学校でよく使われる「まずは3人に訊いてみよう」テクニックが役に立つ。

「中断優先タイム」を要求する前に、まずは3人の人に相談するのだ。他の同僚たちと話し合い、既存のリソースと相談しても方向性が見えない場合は、あなたが対応するのが当然の事案となる。とはいえ、最初に精査することをプロセス化しておけば、あなたのところに持ち込まれる相談事をいくつかふるい落とせる。

念のために言うと、「悪い質問はない」という考え方には賛成できない。悪い質問はある。検索エンジンにかければ0.000036秒で答えが出るのにわざわざ人に訊くケースもあれば、当人の前で同じ質問に答えた(場合によっては複数回)ことがあるのに、また訊いてくるケースもある。真剣に考えて答えなければならない質問――要するに重要な質問――はたくさんあるため、まずは重要な質問に時間を割かなければならない。

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写真=iStock.com/igoriss
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「まずは3人に訊いてみよう」はとても役に立つ。このテクニックを使うと、みんなは同僚たちのことや、お互いにどうサポートし合えばいいかを考えるようになるし、肩書きや役割とは関係なく専門知識のある人が周囲にいることに気づくようになる。このシステムを導入しても、現在に注意を向ける必要性がなくなるわけではない――むしろ、同僚たちに意識を向けざるを得なくなる。

心理学者が忘れられないタクシードライバーの「ある配慮」

アプリからライドシェアを申し込むサービスが登場する前、わたしはよく空港との行き来に、昔ながらのカーサービスを使った――特にアメリカに行ったときに。そのなかでも忘れられないドライバーがいる。

彼は行動や振る舞いをわたしに合わせてこまかく配慮することで、他のドライバーとの違いを生み出していた。わたしが空港に到着したとき、彼はわたしの名前を書いた紙を掲げていたが、そのスペルが正しかったのだ。そんなケースはまれで、通常ドライバーは「John」の「h」を書き落とすか、わたしの名字をいいかげんに書くことが多い。だがこのドライバーは正確だった。

また、彼が「荷物を運びます」と丁寧に申し出てくれたときにわたしが断ると、他のドライバーと違って、彼はしつこく申し出ることも、プレッシャーをかけてくることもなかった(長時間のフライトのあと、わたしは足が目覚めるまで、キャリーバッグを杖代わりに引くのが好きなのだ)。