なぜ仕事のできない人は「忙しい」とアピールしてしまうのか。組織心理学者のジョン・アメイチさんは「現代人は忙しいことを組織の活躍ぶりを示す尺度だと思い込んでいる。だが、忙しいことは珍しいことではなく、くだらない言い訳でしかない」という――。

※本稿は、ジョン・アメイチ『巨人の約束 リーダーシップに必要な14の教え』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。

ラップトップ上であまりにも多くのタスク実行
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社会人は「多忙崇拝」に冒されている

「死ぬほど忙しい」

これは、いざというときにすぐに使える常套文句だ。上司であれ、駅のプラットフォームで会った見知らぬ人であれ、人から「調子はどう?」と訊かれるたびに「とても忙しい」と答えなければ、社会人としての価値がないかのように思い込んでいる――多忙崇拝だ。

この言葉には他の言い訳がついてまわる。

「どうせわたしは歯車に過ぎませんから」
「官僚主義のせいです」
「こういうしきたりですから」
「わたしは外向的なので、こういう仕事は合わないんです」
「わたしは内向的なので、こういう仕事は合わないんです」

どれも本当のことかもしれない。だが、嫌なことや難しいことを避けるために、こんな言い訳をしてはいけない。そもそも、どれも鉄壁の言い訳ではない。おまけに、どれもリーダーが発言すべき言葉ではない。真のリーダーなら、快適な状況や個人的な利益を犠牲にしようとも、こうした言い訳を絶対に使わないと約束してほしい。

「忙しい」を活躍の尺度として使っている

職場でもっともよく使われる言い訳は「時間がない」だ。この言い訳が広く使われ、いとも簡単に了承されるのは、多くの人が「忙しい」を活躍ぶりを測るための尺度として使っているからだろう。

ビジネスに貢献する人は忙しくなければならない。毎日、さまざまなタスクを詰め込まなければならない。さらに、忙しいことを周囲に気づいてもらわなければならない。同僚が「忙しい」と愚痴るのを最後に聞いたのはいつか? あなたが忙しいと最後に愚痴ったのはいつか? 週の最後にエレベーターのなかで会話するのと同じように、職場では忙しさを競い合うような会話がごく標準的なおしゃべりとなった。

「金曜日ですね」
「ああ、金曜日だ」
「忙しいですよね」
「ああ、忙しいね」