夫と母親の衝突
32歳になった桂木さんは、2人めとなる娘を出産。その半年後の産後検診では異常がなかったが、1年後に子宮頸がんが見つかると、医師や夫と話し合い、子宮と卵巣の摘出を決意。手術は無事終わり、桂木さんは一週間ほどして退院した。
ところが、子宮と卵巣を摘出した副作用で、更年期障害のような症状が出るようになる。桂木さんは、精神的に不安定なことが多くなり、母親からの電話の度に泣かされていた。
「母は、自分のスケジュールを私に覚え込ませ、“電話する時間”に電話をしないと、『あんた何してるん? 何で電話してくる時間なのに電話してけえへんの?』と言って、くどくどと狂ったように怒ってきます。『用事があって』などと言おうものなら、『電話してくる時間までに終わらせるのが当たり前!』と怒鳴られました」
そんなある日のこと。いつものように母親から電話で怒られ、桂木さんが泣いていると、突然夫が桂木さんの電話を奪い、母親に言った。
「手術を受けてから、まだ一年も経っていないんですよ! 体もしんどいのに、苦しめるようなことばかり言うのは、いい加減にやめてください!」
すると母親はびっくりした様子で黙ったあと、夫に謝って電話を切った。
「夫は、母が私を実家に呼びつけるのは、『孫に会いたいからだ』と思っていたようですが、だんだん『おかしい』と思うようになり、『何で気を使って実家にしょっちゅう行ってやってるのに、娘の都合は考えず、ささいなことでしつこく怒ってくるの?』と、度々私に疑問をぶつけるようになっていました。母には直接言えなかったからでしょうね。でもこの一件から、『人としてあり得ない』と言い、母と話をするのも母と会うのも必要最低限になりました。母も母で、何でも言うことを聞いてくれていた頃は、夫のことを気に入っていたようでしたが、だんだん思い通りにならなくなると、不満そうでした」
手術から2年ほど経ったある日、母親と、夫や子どもたちみんなで、30代で発症した糖尿病の合併症を起こして入院する継父のお見舞いに行く約束をした。実家で母親をピックアップするのは13時。実家までは車で30分ほどかかるが、出かける前、子どもたちが「おなかがすいた」とぐずり出したため、家で昼ごはんを食べてから出かけることに。
そのことを母親に電話で伝えると、「いつも会う時は一緒に昼ごはん食べるやないの!」「なんで勝手に食べるん!」と烈火のごとく怒り出す。
「母もそれくらい、もういいわって思うなり、自分は食べてないから、何か買うとか食べてから行くとか、柔軟に対応してくれたらいいのに、全くしてくれようとしません。向かっている車の中でずーっと電話で怒鳴られ続け、何度も『ごめん』て言っているのに狂ったように責め立てられて、実家の前に着いたときには、私は過呼吸を起こしていました……」
結局、母親はへそを曲げて、「もうお見舞いは1人で行くからいいわ!」と言って家から出てこず、桂木さんたちだけでお見舞いに行った。