寄付やボランティアを募るのに最適な場所
私たちは、自分でも気づかないうちに自分の置かれた状況の影響を受けます。
同じ人が同じことに直面したとしても、ある状況では冷たい態度をとることもありますし、また別の状況のときにはとても温かい態度をとることがあるのです。
フランスにある、パリ・デカルト大学のルボマー・ラミーは、街の特徴によって、人の援助のしやすさが変わってくるのではないかと考えました。
たとえば、教会や病院、花屋さんのすぐ目の前だと、人は他人にやさしくなるのではないか、とラミーは仮説を立てたのです。
なぜかというと、そういう場所は「愛」を連想させる場所ですからね。気づかぬうちに親切な心を持つのではないかということをラミーは検証してみたのです。
どんな実験かというと、足を怪我しているように装った女性アシスタントが、病院や教会の前で、自分の持ち物を落とすのです。その場に居合わせた歩行者が、それを拾ってくれるかどうかを、こっそりと記録をとってみました。
すると、ラミーの仮説通りでした。
病院の前で持ち物を落としたときには91.6%の歩行者が、教会の前では、75.0%の歩行者が、花屋の前では87.5%の歩行者が拾うのを手伝ってくれたのです。
スタジアムの前や銀行の前、大通りなどでは、平均して68.7%しか手伝ってくれませんでした。
したがって、街の特徴によって、人の親切の度合いはずいぶんと変わることが明らかにされたといえるでしょう。
ナンパするときも花屋さんの前がいい
寄付やボランティアを募りたいのなら、病院や花屋さんの前がいいですね。
そういう場所では、人は無自覚のうちに親切な態度をとるようになってくれますから。
この結果は、私たちの日常でも当てはまりそうです。
たとえば、献血。
献血の呼びかけは駅前でよく見かけますよね。たしかに駅前のほうが人はたくさんいるものの、そういう場所ではあまり親切な気持ちになりませんので、献血をお願いするのなら、花屋さんが近くにあるような場所のほうが好ましいかもしれません。
街を歩いている人にアンケートやマーケティング調査をお願いする場合も同じです。
そんなときにも、駅前や大通りのような場所よりは、病院や花屋さんの前のほうがいいですね。そのほうが、調査に応じてくれる人が増えるような気がします。
そうそう、女性をナンパするときにも、やはり花屋さんの前がいいみたいですよ。
南ブルターニュ大学のニコラス・ゲガーンが、5名の男性アシスタントをいろいろな場所に出向かせ、18歳から25歳くらいに見える女性に声をかけて、「素敵な方ですね。電話番号を教えてもらえませんか?」とお願いしてみたところ、図表1のような結果になったそうです。
いろいろなお願いをするのに、花屋さんの前というのはまことに好都合であるといえますね。