積立投資信託が年2兆円を超すペースで急拡大している。老後資産形成と投資教育が専門のFP山崎俊輔さんは「企業型の確定拠出年金からの“流入分”も含めると約3兆円超です。これまでは主に富裕層の高齢者が高額の資金を株などに投入していましたが、現在は若い現役世代が投信などで少額・長期投資で資産形成するスタイルが主流で、“勝率”は極めて高い」という――。
年3兆円以上ペースで拡大中の積立投信の意外な顧客
ドカンと大金を投じるのではなく、少しずつ継続……そんな積立投資が急拡大しており、年2兆円を超すペースとなっていることが今春、新聞で報じられ、業界でちょっとした話題となりました。
※日本経済新聞「投信積み立て、ペース倍増 年換算2.4兆円」(2023月3日3付)
従来、投資といえば「株」「高額の資金投入」「短期売買」「高齢者の遊び」「株価上昇時のみのブーム」というイメージでしたが、様相が変わりつつあります。キーワードをいくつか挙げてみましょう。
・現役世代が資産形成のため投資をする
・少額を定期的に引き落とす積立投資をする
・投資信託をベースに分散投資される
・解約頻度は低く長期投資を行う
・株価低迷期も継続して投資される
「投信」「少額」「長期」「現役世代の資産形成」「株価低迷時も継続」はいずれも従来の投資観をくつがえすもので、今世紀に入ってから生じた大きな変化です。この変化は、とりわけ確定拠出年金制度の普及(会社員の積立投資信託を行わせ、基礎的な投資教育を行う)と、つみたてNISAのヒット(低コストの投資信託のみを対象にした、現役世代向けの積立投資用非課税投資口座)が、この流れを作ったといえます。
報道によれば、ネット証券の上位5社で、月2000億円ペースの積立投資信託が設定されており、年換算で2兆4000億円となりますが、これは投資信託業界への年間資金流入額の約3割を占めることになります。
規模拡大のペースが著しいのも積立投資の流れで、1年前の記事では「月1500億円突破」としているので、増加ペースが強いことも分かります。もしかしたらすでに月2500億円ペースに近づいているかもしれません。