ユニクロの素材品質は低価格帯では群を抜いている

この強さはなんでしょうか。これはもう何度も言われているように「低価格」と「高品質」でしょう。低価格の割に使用素材や縫製仕様の品質が高いことには定評がありますが、最近ではファッションとしてのデザイン性もかなり洗練されてきています。

これは実際にあった話ですが、知り合いの男性がZARAでジーンズを買ったところ、脚の太さが左右で異なっていたそうです。また、私がZARAで買ったシャツは前立てがねじれて縫製されていました。ユニクロやジーユーでも縫製ミスがゼロではありませんが、こういう商品がそのまま店頭に並んでいる比率は極めて低いです。

ユニクロの店内
写真=iStock.com/tang90246
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また使用素材に関しても同様で、近年、原材料費の高騰で特にダウンやウールはかなり高値となっているため、低価格ブランドはウール素材やウール混素材を極力減らす方向にあり、昨年秋冬にはほとんどの低価格ブランドで合繊(アクリル、ポリエステルなど)100%に置き換わっています。

その中で昨年秋冬物までは2990円の低価格でウール100%のプレミアムラムウールセーターを発売し続けたユニクロの素材品質は低価格ブランドの中では群を抜いていると言えます。昔は「ユニクロの服のデザインはダサい」「ユニクロのカラー物は色調がおかしい」と指摘されていましたが、どちらもかなりマシになってきています。

「嗜好の最大公約数」のデザインを貫いている

上級ファッション愛好家の中にはユニクロ、ジーユーの商品デザインはまだまだダサいと指摘する人もおられますが、世の中はそのようなマニアや最先端層は社会の少数派であり、逆にマニアや最先端層が好むような特殊な尖ったデザインの服を着たいとは思わない人のほうが多数派です。そういう多数派からするとユニクロ、ジーユーの商品程度のデザインの方が使い勝手が良いと感じられます。衣料品の嗜好しこうの最大公約数がユニクロ、ジーユーという状況がもう何年間も続いているのが実態だと私は感じます。

冒頭で述べたような海外低価格ブランド群はユニクロ、ジーユーよりもデザイン性に富んでいる場合がありますが、先にも述べたように縫製や素材の品質は足元にも及びません。個人的にはZARAでさえ、縫製仕様と使用素材の品質はユニクロに比べてはるかに劣るように見えます。

例えば、綿花の中でも高品質とされているスーピマコットンを低価格で使用しているのはユニクロだけですし、カシミヤ100%のセーターもユニクロだけです(もっともスーピマコットンTシャツもカシミヤセーターも製造コストを抑えるために生地は薄め)。すでに撤退した各ブランドは上陸当初は好奇心から買う人も多かったのですが、必然的に長続きせず、結局はユニクロ、ジーユーをはじめとする国内低価格ブランド群に競り負けて撤退に追い込まれたと言えます。