共産党政権の政策運営が問われている

しかし、2020年8月の3つのレッドラインは、不動産神話の価格上昇の期待を打ち砕いた。売るから下がる、下がるから売るという負の連鎖は強まり、エバーグランデもワンダも、他の民間デベロッパーも、業況は悪化した。習近平政権は不動産関連規制を緩和したが、効果は出ていない。

共産党政権の政策運営によって、不動産市況が上向き、景気が安定することは難しいのではないか。そう考える人は増えているだろう。4~6月期の実質GDP成長率が前期比1.8%にとどまったのは、経済政策などへの不安上昇に影響され、個人消費が減少したことが大きい。

北京
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また、2022年、中国の人口は減少に転じた。今後、住宅の実需も減少する。そうした要素に影響され、グリーンランドは債務不履行に陥った。6月に中国人民銀行は追加の利下げを実施したが、大きな効果は出ていない。共産党政権の政策運営によって中国経済の成長率が向上する展開は予想しづらいとの見方は増えているだろう。

日本と似た状況に足を踏み入れつつある

不動産、株式など資産価格の下落基調は鮮明化する。経済全体で需要が減少傾向をたどる。バブル崩壊後、わが国はそうした厳しい環境を経験した。よく似た状況に、中国は足を踏み入れつつあるようだ。

わが国の経験にもとづくと、中国は経営体力の喪失が著しい企業、金融機関に公的資金を注入しなければならない。資金繰りを支え、不良債権を処理する。具体的に、不良債権の買取機構を設立し、財政資金などを用いて不良債権を買い取る。

企業の倒産件数は増加するが、一時的な痛みを伴わずして過剰になった債務、生産能力、人員などを整理し、成長期待の高い分野に再配分することは難しい。不良債権処理に合わせて、規制緩和を進めるなどして個人、企業のリスクテイクを促すことも欠かせない。バブル崩壊後、わが国はそうした取り組みが遅れ、長期の景気停滞に陥った。

一方、中国では共産党政権が民間企業に対する影響力を強めた。その気になれば、習政権は公的資金注入、不良債権処理などを迅速に進められるだろう。しかし、そうなっていない。過度にリスクをとり事業運営が行き詰まった民間企業を公的資金で救済すれば民衆の不満は高まる。土地の譲渡益減少によって、地方政府の財政が悪化し、思い切った対策も打ち出しづらい。