日本人の美徳「おかげさま」はパワーワード

感謝の気持ちを伝える際のパワーのある言葉として、「おかげさま」を挙げたいと思います。

「おかげさま」は、他人から受けた助力や親切に対して感謝の気持ちを表す言葉です。

漢字で書くと、「お陰様」ですが、「陰」とは、神仏などの偉大な存在を示しており、「神仏の陰の下で庇護を受ける」ことに、敬称(様)をつけて「おかげさま」となったようです。

日本の仏像
写真=iStock.com/wesvandinter
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つまり本来は、利益や成功があったときに「神仏から恩恵を受けた」という意味で使用されていた言葉なのです。

日本人は古くから、この「おかげさまで」という言葉を日常的に使ってきました。

いまでも地方に行けば、たとえば道ですれ違ったときなどに「おかげさまで暖かくなってよかったですね」などと会話しているのをよく耳にします。

暖かくなるかどうかは気象現象にすぎないのですから、別にありがたがることはないはずですが、自然に対しても感謝しているのです。

これは、四季に恵まれた島国の自然とうまく調和して生きてきた日本人の特質だと思いますし、このように森羅万象に感謝の念を抱けるのは、日本人の美徳ともいえるでしょう。

世界各国の感謝の言葉は実利的

この「おかげさま」(感謝を表す言葉)を英語にすれば「thank」、ドイツ語にすれば「danke」、フランス語にすれば「merci」になります。

ちなみに、「thank」は英語の「think」(考える・思う)に由来しているもので、「danke」も同様に、ドイツ語の「denken」(考える・思う)に由来しているそうです。

そういう意味では、まず“人ありきの言葉”といっていいでしょう。

おもしろいのはフランス語の「merci」です。これは、ラテン語の「merces」が語源だそうですが、本来は「報酬」という意味だったとか。それが中世になって神からもらう「恵み・慈悲」を意味するようになり、転じて感謝を表すようになったものだそうです。

「おかげさま」と比べると、もともとはずいぶん実利的な意味合いの強い言葉だったようです。

「thank」「danke」「merci」など、世界各国に感謝の言葉はありますが、私には、「おかげさまで」という言葉には、明らかに“相手に対するより謙虚な気持ち”が込められているように感じます。