自分の前頭葉の存在をつねに意識すべき

多様性が礼讚される時代へ大きくシフトし、情報があふれる毎日を生きながら、わたしたち大人はみな、もがいています。なぜなら、これまで「自分らしさ」を封じ込める、前頭葉を使わない教育をされてきたからです。小・中・高校であれば、基礎学力を身につけるために知識を詰め込む教育でいいのですが、残念ながら、今の日本の大学で、その先の教育ができているところは少ないといっていいでしょう。

前頭葉は、微妙に変化する繊細な感情をコントロールし、自分が過去にインプットした多種の知識を比較対照しながら高度な判断を行ないます。そこから意欲や自発性が生まれ、わたしたちの性格と行動を決定づけます。前頭葉がわたしたちの人生を導いているといっても過言ではないので、正しく舵を切らないと、とんでもない方向に流されてしまいます。

そうならないためにも、深呼吸しながら自律神経をコントロールするように、自分の前頭葉の存在をつねに意識するようにしてください。

他人に流されず、あふれる情報に踊らされず、より自分らしい選択をしていきたい、とわたしは思うのです。もちろんそれは直感によるものでなく、あれこれ考え、しかもそれは試してみないとわからないと言い聞かせながら、自分で出す答えです。なぜならそれが「幸せに生きること」だからです。

「こだわり」には「とどこおる」という意味もある

あなたは何か「こだわり」をお持ちですか。

ひとつのことを成し遂げるためには「こだわり」を持ち、物事に妥協せず、とことん追求することが大事です。それによって問題が解決し、科学が前進することもあります。

一方で「こだわり」には、「とどこおる」という意味もあります。ちょっとしたことを必要以上に気にして心がとらわれると、頑固になり、柔軟性を失い、自分とは違う考え方を受け入れられなくなります。これは前頭葉バカの状態です。「こだわりすぎかな」と思ったら、いったん自分を振り返ってみたほうがよいでしょう。

前頭葉の機能が落ちると、同じことを繰り返す「保続」という現象が起こります。たとえば、わたしが診察室で年老いた患者さんに次のような質問をします。

高齢者に説明する男性医師の手
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

「今日は何月何日ですか」

すると、○年○月○日です、と答えます。次に、別の質問をします。

「あなたの生年月日を答えてください」

すると、まったく同じように○年○月○日です、と答えます。さらに別の質問をします。

「次の大事な予定はいつですか」

すると、また同じように○年○月○日です、と答えるのです。