自分がバカになっていることに気づけない
わたしは、医師として「前頭葉バカは治すことができる」と信じ、信念を持って、本稿を執筆しています。
次のような視点を持つことが「前頭葉バカ」を予防・改善する処方箋になります。
①変化を楽しむ
②自己モニターをする
③アウトプットする習慣をつける
④「より現実的な議論のしかた」を身につける
⑤前頭葉を元気にするために「ただ動く」
わたしも含め、誰でも前頭葉バカになることがあります。9割の人が前頭葉バカだというのは、そういう意味です。
「誰もが前頭葉バカに陥る危険がある」ことを肝に銘じておかないと、自分がバカになっていることに気づけません。その前提として、はじめにみなさんと共有しておきたいことは次のふたつです。
常識やマジョリティがすべて正しいわけではないことを知る。
呼吸していることを普段は忘れているように、前頭葉を使うことを忘れがち。だから前頭葉の存在を強く意識する。
「みんな、そういっている」「そんなの常識だ」といった言葉や同調圧力を押し付けられる場面が世の中にはたくさんあります。その圧力は非常に強く、ともするとすぐに押しつぶされます。
思考、意欲、感情、理性を司る「自分らしさ」の源
しかし、マジョリティの意見や、テレビで有名な学者やコメンテーターがいっていることが、すべて正しいとはかぎりません。それは、物事のひとつの側面にしかすぎないかもしれません。何も考えず、そのままうのみにしてしまうと、間違いなく前頭葉バカになってしまいます。
外からインプットする情報、つまり見る、聞くあらゆる情報、そして自らの内から湧き上がってくる感情をそのままスルーせず、一度立ち止まり、前頭葉を働かせて問いかけてみることが大切です。
「それは本当なのか」
「別の選択肢はないか」
「他の可能性もあるかもしれない」
「なぜあたりまえのようにいわれているのだろうか」
「反対の立場からはどんな意見がある?」
「この意見が多数なのは誰にとってメリットがあるのか」
「その発言に対してなぜ自分は簡単に納得してしまうのか」
「なぜこんなに不安な気持ちにさせられるのだろうか」
「その確率はどのくらいなのか」
こんなふうに一度立ち止まって、自分の「前頭葉フィルター」を通します。疑問を持つことによって、物事への理解を一段階、深める作業をしなければいけません。これをしないと、他者をいたわることも、自分自身を理解することすらできません。
思考、意欲、感情、理性などを司る前頭葉は「自分らしさ」の源というべき場所です。その前頭葉を使わずにいることは、自分らしく生きることを放棄するのに等しいのです。