保団連の調査では医療機関の65.1%でトラブル

全国の保険医の団体である全国保険医団体連合会(保団連)の調査(5月23日~6月19日)では、8437の医療機関のうち、65.1%でトラブルが発生していたことがわかった。

同調査によると、「カードリーダーで別人の顔が認証された」「母親が娘のマイナ保険証で顔認証ができてしまった」など信頼性の根幹にかかわるトラブルが起きているのだ。そもそも、マイナ保険証は顔認証ができ本人確認が早くて正確なはずだが、それを覆すような例が出ているわけだ。これでは患者も医療機関も不安になるのは当たり前だろう。

もちろん、メリットを感じている医療機関もある。レセプトやそれに付随する書類の作成で、「名前などの入力が一回で済み便利」「保険証が変更された時などに資格確認が早い」という声もあったが、取材した限りでは少数派だった。

導入後のトラブルだけが話題になっているが、取材を進めると導入そのものが大きな負担だという声も多く聞かれた。

システム導入にかかる費用は補助金だけでは足りない

神奈川県で開業する70代の歯科医は開口一番、「とにかく大変! 助けてくださいと言いたくなるくらい大変です」と、悲鳴にも似た声を上げた。

この歯科医院は50年にわたり、地域医療を担ってきた。患者の中には親子3代で通っている家族もいるほど患者からの信頼は厚い。ところが、この医院はオンライン化のインフラが整っていなかった。そのため、マイナ保険証の導入義務が決まった時、急いで準備を始めたが、ネット環境の整備などで大工事になったという。

もちろん、補助金だけでは足りず、金銭的負担が大きかった。それに加え、書類の作成や事務処理、工事の発注などに時間がとられ、診療にも悪影響が出た。

「患者さんに向き合う時間が大きく削られ、我々以上に患者さんに不便をおかけしています。これでは本末転倒。現場の実情を無視したやり方に怒っている仲間は多い」と話す。

システム導入にあたってはITコンサルタントにサポートを依頼。運用するまで一からスキルを学ばなければならず、慣れるまでは大きなストレスを抱えることになると言う。