IFAにも利益誘導や利益相反の問題はある
しかしながら、IFA法人とIFA(個人)が個別に業務委託契約を結ぶ場合は、既存の銀行や証券会社の一部と同じように、販売手数料が収益の柱となることが多い。
新しいNISAでも柱となるであろう、つみたて型やバランス型の投資信託などを売るだけでは、販売手数料も低く抑えられており、日々の生活を成り立たせることは事実上困難だ。顧客側もより短期間での高いリターンのハイリスク商品を望んでいたりする。販売手数料を得るためもあり、おのずと、仕組債や外貨建て保険、日本や米国の個別株といったハイリスク商品の回転売買に傾斜していくことになる。
あるIFAは、大口の個人顧客(60代、都内会社役員)のために、日中は日本株、夜中は米国株の値動きをスマホで追うため「四六時中気が休まることがない」という。しかも、顧客からパスワードを教えてもらい、顧客名義の口座で「成りすまし」売買するといった違法行為も行われていたりする。
足元のように株価が上昇し儲かっているときは、顧客も満足ながら、一転して相場が崩れ損失が発生したときに、果たしてお互いが良好な関係を築けるのか。IFAも既存の金融機関同様、営利活動である以上、顧客に対する利益誘導や利益相反の問題などが完全に消えるわけではない。
どうやって最初の顧客にたどり着いたのか
IFAの活動には、もう一つ素朴に気になる点がある。証券会社やメガバンクを退職し、独立や転職をした当初は、全く顧客基盤がない状態だと思うが、一体どうやって、最初の顧客を獲得し、ビジネスを軌道に乗せていったのだろうか?
資産運用に興味がある個人は多いものの、誰も名も知らないIFAにいきなり虎の子の資産の運用を託そうとは思わないはずだ。SNSでの情報発信やセミナー開催という手段で地道に広げるにも限度がある。
はっきりと言えば、前職からの顧客に「内密に」アプローチし乗り換えてもらったのではないか。逆に言えば、乗り換えてくれる見込み顧客がある程度算段できたから、独立や転職に踏み切れた、のかもしれない。
IFA法人やIFAは、一様に「前職からの顧客を引き継ぐことなく、一から開拓した」というが、その言葉を信じるものはほとんどいないだろう。もっとも、顧客が了解していた、顧客の自由だと言われると対応に限界があるのも事実だ。
アドバイザーナビによるIFAアンケート調査によれば、転職するにあたり、前職から引き継いだ既存顧客と新規顧客の割合は「既存が7割以上、新規が3割未満」が全体の52%に達しているという。