日本証券業協会が新規制案を発表

これは実は、資産運用業界全体にとって由々しき問題だ。既存金融機関にとっては顧客情報の流出や営業基盤の毀損きそん、IFA側にとっても業界でのプレゼンスがいつまでも向上しない要因となろう。

外資系金融機関は無論、本邦金融機関の多くでも、退職の際に、名刺やメールアドレスを含む既存顧客リストの持ち出しは厳禁であり、顧客引き抜きをしない旨の誓約書などを書かせるところも多い。

そもそも、顧客情報の持ち出しは、製造業であろうと金融業であろうと、訴訟対象になる行為だ。仮に法令違反に問えなくとも、信義則に反する。

南京錠がかけられたファイル
写真=iStock.com/vchal
※写真はイメージです

大手の金融機関側にも問題がある。本件に関して、去る者を追わずなのか、ほとんど野放し状態だった。退職者に対して、今一度、顧客情報持ち出しについて厳格に対処する必要があろう。

こうしたなか、日本証券業協会は、6月に新規制案を発表した。証券会社の役職員による、転職時の顧客情報持ち出しを禁止し、前職から持ち出した顧客情報をもとに、転職先で営業活動することを禁止するというものだ。禁止行為をした場合には、営業活動に必要な外務員資格登録を取り消すという。

ようやく重い腰を上げたわけだが、何より勝手に情報が持ち出され、情報がぞんざいに扱われている大多数の顧客にとってはたまったものではない。不信感が募る。

実際、顧客からの通報により、IFAの顧客情報流用が明らかになり、前職場から警告文を受けたり、係争に発展したりするケースもあるという。

IFAには不透明な部分も多い

顧客に寄り添い、着実に成果を出すIFA法人などがある一方、新規顧客獲得や営業手法が不透明なIFAも多いというわけだ。

こうした懸念や問題点は、金融当局も把握してきており、本来「資産所得倍増プラン」で主役を担うはずのIFAの立ち位置が揺らぎ始めているのだ。

実際のところ、「資産所得倍増プラン」においても、新たに「金融経済教育推進機構(仮)」の設立と「中立的な認定アドバイザー」の設置がうたわれている。

既存の銀行や証券会社や営業員は顧客本位ではないという理由でIFAが注目されてきたものの、そのIFAにも種々の問題点があり、それならばと、(必ずしも役割が全て重複しているわけではないが)新たに「中立的な認定アドバイザー」制度ができようとしているのだ。

この先IFAは、

・新規顧客をどう確保したのか?
・どうやって収益を上げているのか?
・持続可能な経営は可能なのか?
・何かあったときの対応や保証は本当に問題ないのか?

といった顧客の疑問に答えるとともに、「顧客本位の業務運営」と「持続可能な収益性」の両立を今以上に追求していくことが必要になる。

ここまでみてきたように、個人が資産運用を行う際に、選択肢となるのは、①メガバンクや地銀など銀行、②証券会社、③ネット証券やネット銀行に加え、④IFAなどがあるが、どれも一長一短ではある。

彼らが民間企業として営利を求めるのは当然ではあるものの、資産運用に興味のある個人が、安心し信頼できるような環境の整備が全てに優先するはずだ。

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