針のむしろ

両親から借りたお金で借金の清算を終えた桜木さんは、もう二度とギャンブルしないことを決意した。

しかし、妻はもう、桜木さんを簡単に信用してくれるはずがない。結婚してからずっと嘘に嘘を重ね、突き通してきたのだから当たり前だ。

「妻は、『あなたを疑うのはつらいけど、死ぬまで恨み続けると思う』と言っていました。それでも、僕は妻に感謝しなければいけません。こんな僕とこれからも一緒にいる決断をしてくれたのですから。妻の決断の理由は、『子どものため』と言っていましたが、僕はそれでもうれしく思いました」

第2子出産後、産院を退院した妻は、第2子と共に自宅に帰ってきた。そして妻が桜木さんにギャンブルと借金をさせないために立てた対策を、実行に移した。

それが以下だ。

・現金を持たせない
・クレジットカード、キャッシュカードを徹底管理
・定期的に個人信用情報の確認
・家と会社の往復
・発言を信用しない

桜木さんは、徹底してこの対策に従った。そして妻もまた、桜木さんのために協力した。

現金は、逐一必要な時に渡した。使ったお金とレシートは、おつりと共にすぐに妻に返した。クレジットカードとキャッシュカードは、どうしても必要な時以外、桜木さんには渡さない。基本的に外出禁止。ただし会社の飲み会はOK。そして1年に1度、個人信用情報を確認した。

「僕にとって一番つらかったのが、『発言を信用しない』でした。僕が何を言っても、『どーせ、嘘でしょ?』と信用してもらえないのです。そんな生活、誰でもつらいでしょう? それが最も身近な存在である妻ならなおさらです。1年くらいそんな感じの日が続きました」