たとえば、目の前に「木の箱」があったとき、これを「スギか、ヒノキか……」と木材の種類で分類するのが「系譜論」の考え方である。一方で、「この箱は何に使うのだろうか」と使用目的から分類を進めるのが「機能論」である。
西洋と東洋という捉え方はわかりやすい。だが、それでは「なぜ東洋では近代化が遅れたのか」という問いに答えられない。第一地域、第二地域という分類は、ひとつの補助線である。梅棹は、第一地域と第二地域のもつ共通点と発展過程の類似を示したうえで、西洋と東洋という分類の限界を示した。
二分法での発想では、おのずと行き詰まる。文明のように、自明と思われているものでさえ、別の軸を用いれば、新しい視点が得られるのだ。40年ほど前にこの本を読んだときの目からうろこの落ちる感覚を今でも鮮明に思い出す。この2冊に限らず、物事の考え方や見方の前提となる座標軸自体についての新たな枠組みが述べられている著書に触れると、自らの構想力の境界線が取り払われるような感興を惹き起こされる。まさに読書のもたらしてくれる醍醐味だろう。
塚本隆史氏厳選!「役職別」読むべき本
■部課長にお勧めの本
『企業変革力』ジョン・P・コッター著、日経BP社
多くの企業では、マネジメントの過剰とリーダーシップの欠如が起きている。豊富な事例を盛り込みながら、演繹的に企業変革に必要な条件を明示しており、非常に説得力がある。
■若手、新入社員にお勧めの本
『新・ニッポン開国論』丹羽宇一郎著、日経BP出版センター
「 オンリーワン」なんて言い訳だ、老人よ引け、飛び出せ若者……。伊藤忠商事の会長を務めた著者が、真剣に日本を憂い、日本人よ力を取り戻せと呼びかけている。読むと元気が出る本。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時
(原 英次郎=構成 小倉和徳=撮影)