「せっかちなんでしょうかね」と苦笑する住友信託銀行・梶原憲一さん(34歳)の仕事の効率のよさは折り紙つきだ。
「上司から、『効率性はもう十分。あえて非効率な世界を追いなさい』と言われています」
2009年1月に投資金融部に異動。シンジケートローン(他の金融機関との協調融資)の営業部隊のいわば後方支援。機関投資家のニーズを拾ってローンを組成する。前の部署は、大口融資先である大手総合商社が顧客の東京営業第2部。最先端の金融技術に明るく、法人営業と投資金融の双方の業務に精通する。
一つのことに固執しない梶原さんは、傍からは見切りが速すぎると思われがち。上司に「ダメモトで深入りしてみろ」と言われた案件も「自分としてはちゃんと深入りして見切ってるつもり。『これこれこうだからダメです』と説明しちゃう」。
そんな梶原さんの習慣は参考になる。作業がすぐ終わりそうなメールは、特に期限がなくても開封後直ちに終わらせて削除。資料・稟議書などの本文作成は、「日を跨ぐと“てにをは”などの国語的な世界にはまってしまう(笑)」から、極力1日で終わらせる。
「『ながら』が苦手。パソコンの画面上にいくつもファイルを開けている人がいますけど、僕は関係ないものは必ず閉じますし、食べながらの仕事は絶対しない。仕事しながら30分かけて食べるより、10分で食べて20分集中したほうが速い。時間がないときは食べません」
続けて集中できるのは60~90分。この間、メールは開かない。コーヒー・タバコは必ず席を外してから。翌日の予定を確認して夜8時には退社。
「早く帰っても飲むことが多い(笑)。退社時間が早いのは業務特性や職場の意識も関係します」
もっとも、梶原さんが強く意識するのは、時間のゴールではなく作業のゴールだ。
「ゴールを見据え、到達するために何をすべきかを手前のほうから固めていけば、仕事の優先順位も自然と決まる。一度仕事を始めたら、そのとき決めた目標に到達するまでやめません」
それは営業担当として総合商社のプロジェクトファイナンスやM&Aの案件化を担っていた頃に、とりわけ意識したという。
「担当先で入館証を貰って、朝から晩までいろんな営業部にお邪魔して融資案件を探しました。それこそムダ打ちの嵐ですよ」
商社が一番求めているのはスピード。クロージング間近のときなどは夜遅くまで仕事もした。
「目的のないムダ打ちは好きじゃない。効率は意識してるし、単に手前にある仕事をこなすことはできますが、それは業務や案件を自分なりに消化したうえで成果を出すこととは違う」
傍目にどう映ろうと、ゴールの設定がいかに効率化を促すかがよくわかる。
※すべて雑誌掲載当時