鬼の形相で彼女がキレたワケ

婚活アプリで出会った30代後半の金融系の企業の秘書課の女性との交際中、2人で3泊4日のサイパン旅行に出かけた。

読書の習慣がある筆者は読みかけの小説を1冊持参した。おもしろくて、中断することができなかったのだ。定例の雑誌の仕事があるのでパソコンも持参した。南の島に滞在中も本を読み、メールをチェックして、日本にいる仕事関係の相手とやり取りをする。

朝はプールで1000メートル泳いだ。運動は必須だ。仕事のひとつだと思っている。フリーランスなので健康を損なうと仕事を失う。人生が終わる。しかし、彼女はもっと遊びたい。毎日違う水着を着て、毎日一緒にマリンスポーツをしたい。でも、1人で楽しんでもらった。

帰国のとき、サイパンの空港ラウンジで彼女がキレた。

「私、あなたがこんなに自分勝手な人だと思わなかった!」

がまんが限界に達していたのだろう。こちらにも言い分はあった。仕事をすることもプールで泳ぐことも事前に伝えた。彼女は了解していた。費用はもちろんこちらが全額負担している。

「仕事することも、泳ぐことも、行く前に言ったでしょ」一応反論してみる。

「ほんとうに仕事するとは思わなかった!」鬼の形相だ。

ラウンジのチャモロ人のスタッフがなだめに来た。「ケンカシチャ、ダメ。ケンカシチャ、ダメヨ」という病彼女とはそのまま会話をすることなく搭乗し、機内でもしゃべらず、成田で別れた。

婚活中毒になるパターン

帰国後に関係修復に努めなかったのは、婚活で出会ったから、ということもあった気がする。婚活は、その性質上、交際までの経緯がない。いきなり出会って付き合う。友人関係や仕事を通して徐々に好意を抱いていく“助走期”がない分、執着もないのだろう。

今の時代の婚活システムはよくできているので、またすぐに新しい相手と会える。目の前の相手にすがらなくてもいい。面倒くさい人とは別れよう、と思ってしまう。

しかし現実的には、面倒くさくない相手などいない。誰もが自分を生きているからだ。どんなにおとなしそうに見える人でも、その人の人生の主人公はその人自身だ。自分が一番。最終的に自分と家族以外の誰かを優先させることはない。

だから、相手から関係を修復してくることもない。さっさと別れ、こちらもあちらも婚活を再開する。新しい相手を探す。このサイクルをくり返して“婚活中毒”が2人完成する。

サイパンで別れた秘書の彼女はすぐに婚活アプリを再開し、婚活パーティー会場でも再会した。おたがいかつて交際していたことなどなかったかのように笑顔で会話をして、それぞれ別の相手とマッチングして帰路についた。