競合他社との差別化を図るにはどうすればいいか。経営コンサルタントの石原尚幸さんは「値下げ競争になってしまうと、必要な利益を確保できなくなる。私が担当したガソリンスタンドでは、カーメンテナンスサービスという『価格以外の選択肢』を提供することで、安売りの超大型店舗と勝負せずに生き残ることができた」という――。
ガソリンスタンドの給油機
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※写真はイメージです

客数と客単価のシーソーゲーム

値上げをしたいけれど、値上げをすればお客さんが離れてしまう……だからといって、値上げをしなければ利益が減ってしまう……。この客数と客単価のシーソーゲームに疲れているビジネスパーソンが多いのではないでしょうか?

私は石油元売の出光興産の社員として、客数と客単価のシーソーゲームを続けるガソリンスタンド(以下、GS)業界を長く見てきました。GS業界では「競合よりも1円でも安くガソリンを売ることが客数を確保する唯一の策である」というのが常識でした。

確かに客数と客単価はシーソーの関係。GSでは、競合より1円/L安く売れば客数は伸び、1円/L高く売れば客数は減ります。それは見ていて笑ってしまうぐらいの相関関係。給油を自分でできる「セルフサービス」が解禁となり、人手をかけない代わりにガソリンを安く売るお店が続出し、安売り競争に拍車がかかりました。

【図表1】客数と客単価のシーソーゲーム
筆者提供

このような価格競争を繰り広げた結果、多くのGSは必要な利益を確保できず、拠点の閉鎖に追い込まれていきます。事実、1996年の石油自由化からわずか20年でGSは6万店から3万店へと半減することになりました。

競合よりも高い価格で客を呼び込む戦略

「このまま客数と客単価のシーソーに乗っていては、いつまでたっても利益を確保できない」……こう悟った私は「どうすれば、客数と客単価のシーソーから逃れ、客単価を上げながらもなおかつ客数を確保できるか?」を必死に考えました。

その結果、辿り着いたのが「2軸思考」。これは私が発案した“競合よりも高い価格を設定し、なおかつ客数を減らさないための戦略的思考法”です。この「2軸思考」を取り入れたことで、私が担当するGSは、近隣に超大型安売りGSがありながらも、こちらが期待する客数と客単価、その両方を確保することに成功しました。

また、石油業界を独立後は、石油業界以外の顧問となり、業種業界を問わず2軸思考を試してきました。その多くで競合よりも高い値付けでありながら、客数を確保することに成功してきています。

そこでここでは、皆さんの業界でも値上げをしても客数を減らさないための思考法を得てもらうべく、私が実践してきた「2軸思考」の実例をご紹介します。