ハイヒールを履く女性は「合理的でない」
そして18世紀に、女性たちには合理的な思考ができないと嘲られたように、これら19世紀の女性たちもまた、参政権を与えるにはふさわしくないと宣言された。理由の1つとされたのが、あのように馬鹿馬鹿しい形の靴を履きたがる人間に、有権者としての責任を負う能力などあるはずはないというものだった。これは別に僕の個人的見解じゃないからね。本当だって!
それでもヒールが姿を消すことはなかった。20世紀初頭、ハリウッドのけばけばしい電飾とともに、大衆の目に映るハイヒールの評価はさらに上昇した。しかし最後の大きな飛躍が起きたのは1950年代のことで、これは単なるファッション革命というより、技術革命でもあったのだ。建築家たちが世界中の大都市で目もくらむような鉄筋の高層ビルを建てていたように、伸縮性を持ち強度のある鋼鉄は、かかとが尖ったスティレット・ヒール(ピンヒール)の登場に欠かせない役割を果たした。
技術革命でハイヒールのデザインも進化
ルネサンス期イタリアの刀身の細い短剣から名づけられたこのヒールは、芯に鋼鉄が使われているため、高さを保ちつつきわめて細い。1960年代までに、この金属製の芯を包む素材は木材や革からプラスチックに変わり、それ以来デザイナーたちはひたすら靴の美しさを追求しつづけている。
ペルシア人戦士がハイヒールを最初に採用した時から長い時間を旅してきたが、そのデザインと象徴は時代とともに変化を続け、今に至るまで流行りすたりを続けている。やがて未来主義的な奴らのファッションのマストハブ・アイテムになったとしても驚かないが、ただしそれが、ヒールの持つ軍事的な機能性ゆえでないことを願いたい。軍事紛争のない未来を想像するほうが楽しいからね。
とはいえ、もしいつの日かロボットたちが僕たちに反抗するようになったら、6インチ・ヒールで武装した人間の抵抗組織が戦いに赴くというのも素敵じゃないか? ルイ14世ならきっと喜んだだろう。