親の居住地が子どもの将来の可能性を左右することがある

<解説>

子どもは大人になるまで、親の居住地で過ごすことが一般的です。そのため、親がどこに住んでいるかは、子どもの人生の見通しに大きく影響します。教育、医療、生活必需品、贅沢品、遊び、そして仕事へのアクセスとそのよしあし……。インターネットがあるからと言っても、オンラインでは済まない、済ませられない活動は、教育や医療、遊び、仕事などを含めて、多々あります。

スズにはささやかな夢がありました。平均的な会社員の給料では、スズの理想の平日は月に数回程度しか叶えられないと思いますが、もしスズのお母さんが都会に住んでいたならば、それほど無理せずとも叶えられる夢です。でもスズには、通学に不便な島内の高校に通い、そして島内で就職するという未来が待っていそうです。苦労して育ててくれているお母さんを置いて、島を離れる決意ができなければ。そしてそれをお母さんが後押ししてくれなければ。高校への通学路で犯罪に巻き込まれないとも限りません。

誰も悪くないにもかかわらず、親の居住地が子どもの可能性を左右することがあります。その意味では、スズもやはり、ハズレガチャを引いたと言えるでしょう。

どんな人も何かしらのハズレガチャを引いている可能性がある

みなさんはここまでに挙げた8人のケースのうち、自分に近い人はいたでしょうか。図表2のチャートを使って考えてみましょう。

例に挙げた8人が、極端に不幸というわけではないことに気づかれたかもしれません。どれも決して稀であるとは言えないケースであり、多かれ少なかれ当てはまるところがあったのではないでしょうか。

ただ、ここで知っていただきたいのは、一見すると「勝ち組」のような人も、ハズレガチャによって人生を左右されていることもあるということです。非行に走る代わりに、やる気を失っていたり、引きこもっていたりするのかもしれません。そして、そうとは気づかずに、その呪縛を再生産しているのかもしれないのです。

このように考えると程度の差はあれ、どんな人も何かしらの「ハズレガチャ」を引いている可能性があります。確かに、人よりも大きなハズレガチャを引いている人を見ると、自分の小さなハズレガチャが気にならないかもしれません。何かしらのハズレガチャを引いたことで、自分より小さなハズレガチャの人たちを羨んだり嫉妬したり、不公平感をもったりして、悩み、苦しんでいるという点ではみんな似ている状態と言えるのです。そしてそれを乗り越えることができたら、と思っているみなさんも少なくないはずです。