本当はゲーム制作の仕事をしてみたいが初めからあきらめている
ミホは、オンラインゲームが好きです。中学の合格祝いに祖父に買ってもらった高性能パソコンでゲームをしている時間が、唯一の楽しみです。今はまっているゲームは3人でチームを組んで生き残りサバイバルをするシューティングゲームです。ゲームをいっしょに遊ぶ「フレンド」もできました。ゲームで遊ぶのも好きですが、「もっとこんな事がゲーム内でできたら楽しいのに」と思うことがあり、ゲームを作る側の仕事に興味をもつようになりました。
「でも、どうせ私の将来は医学部にいって眼科医になって、ママの病院を継ぐ以外に選択の余地はないんだろうな」と、あきらめのため息をついて、今日も学校の宿題にとりかかります。ときどき気分がすごく落ち込むときがありますが、まだ両親には伝えていません。
家が裕福でも「医者になる以外の選択肢がない」という不幸
<解説>
もしミホがSNSで、勉強をしているとき以外の生活を紹介していたら、羨ましいと思う人がいるかもしれません。ミホにはお金がありそう、親が優しそう、家が広くてきれい、食事が豪華、習い事もさせてもらっている、家族で仲よく旅行に行っている……。でも実際のミホの生活は、気の毒なほど勉強漬けです。小学1年生のときから塾通いだったのですから。それも親が決めた職業に就かせるためにです。
中学校に入った後のミホは、成績に関して苦労はないようですが、オンラインゲームの制作という、自分の「好き」を追求する機会はもてそうにありません。保育園のときから医学部入学を目標に据えられてきたミホは、自分の「好き」を追求することを、とうの昔にあきらめてしまっているのです。
ミホのケースは、親が金持ちでもアタリガチャとは限らないことを教えてくれます。ミホが親の言いつけに従順な性格であっただけで、仮にもし、もう少し反抗的な性格だったら、衝突が絶えない家庭となっていたでしょう。ひょっとすると暴力沙汰もあったかもしれません。ならば、両親がミホに対して行っているのは、ソフトな教育虐待とも言えそうです。また、ミホは医学部に行って眼科医になって親の病院を継ぐことに、興味があるわけでもなさそうです。自分の人生についてなんの選択肢も与えてくれない親は、どんなに裕福であろうとも、ハズレガチャの可能性があります。