不安な気持ちを解消するにはどうすればいいのだろうか。公認心理師の柳川由美子さんは「ミラーニューロンという神経細胞の影響で、周りの人が上司から叱責されている声を聞いているだけで影響を受けてしまうことがある。こうした不安な気持ちを和らげるためには、自分自身を俯瞰して見ることが大切だ」という――。

※本稿は、柳川由美子『晴れないココロが軽くなる本』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

オフィスでストレスを感じるビジネスウーマンのシルエット
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

なぜ叱責の声を聞くと影響を受けてしまうのか

仕事でミスをして、過去に上司から叱責しっせきされた経験があると、「またミスをして怒られるのではないか……」「怒られたらどうしよう……」と過剰に不安になってしまいます。

また不安を感じやすい人は、自分が怒られていなくても、周りの人が上司から叱責されている声を聞いているだけでも影響を受けてしまうことがよくあります。

これは、人間の脳には「ミラーニューロン」という神経細胞があって、他人の動作や感情などをまるで自分がしているかのように認識してしまいます。

ミラーニューロンは「ものまね脳」「共感脳」ともいわれており、「うれしい・悲しい」といった感情も自分のことのように感じてしまうのです。

たとえば、テレビの旅番組を見ていて広大な景色が映し出されると自分の心も出演者の気持ちと同じように高揚したり、寒い海に飛び込むシーンを見ていて恐ろしく寒気を感じたりします。

いっぽう、このミラーニューロンの働きがよい方向に向かうこともあります。たとえば、成功している人の考え方や行動に共感すると、それが脳にコピーされて行動をまねるようになり、自分もその人のようになっていくという場合です。

これがミラーニューロンの働きです。

雰囲気の悪い職場は、いるだけで暗くなる

ミラーニューロンには個人差があります。とくに不安になりやすい人は、この神経細胞が過敏に働きます。上司が仕事ができて、性格もいい人ならいい影響を与えますが、多くの場合はその逆の職場が多いのも事実です。

たいていの場合は、上司が怒鳴ったりするので、同じ職場にいる人たちは脳に影響を受けて、雰囲気も暗くなります。さらに、自分が叱責されたことに不安を感じる人であれば、職場にいるだけでも暗くなってしまいます。

このような状態が毎日続くとストレスで自律神経のバランスが崩れ、身体にさまざまな症状が出始めます。

朝起きることができない、よく眠れない、食欲がなくなる、やる気が出ないなどの症状が続き、会社に行きたくない、実際に会社に行けない(=適応障害)となってしまいます。