何かになるのではなく“自分の殻を破る”

ハーバード生がよく使う言葉がもう1つあります。それは“Grow out of your comfort zone.(自分の殻から抜け出せ)”。

現状を打破するところに自分の役割や未来を見出しているので、既存の職業名を目指すことには価値を置いていないのだということが分かります。今、社会的に成功している人を思い浮かべても、職業名や肩書きという「名詞」にとらわれている人は少ないように思います。

たとえばホリエモンや前澤友作さん、イーロン・マスクやビル・ゲイツの職業が何なのかは、一言では答えられないですよね。マーク・ザッカーバーグだって「Facebookというプラットフォームの創始者になろう」と思って今の立場になったわけではないはずです。時代を読み、自分を信じて、常に殻を破る「ダイナミックでアーティスティック」な生き方を実践する人が、成功者になるのではないでしょうか。

それは、地道に自分の好きなことを継続し、スキルを伸ばしていった先に「動詞」での活躍があるのであって、あらかじめ「~~になる」と決めて即席講習で身につけたスキルで職業を手に入れるのとは異なります。

たとえば知り合いのMIT(マサチューセッツ工科大学)の学生に、ノンネイティブの人も英語でスピーチをできるようになるメソッドを開発している子がいます。これも、彼が自分の得意なことを磨いていって、Make an impactしよう、とした先に見つけたビジネスなのだと思います。

まずは自分がいる場所でインパクトを起こそう

私自身、娘のすみれに「ハーバードに行きなさい」と言ったことも「バイオリニストになりなさい」と言ったこともありません。

廣津留真理『ハーバード生たちに学んだ 「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』(講談社)
廣津留真理『ハーバード生たちに学んだ 「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』(講談社)

実際、「娘さんの職業は何ですか?」と聞かれても、答えるのは非常に難しい。コンサートなどでバイオリンの演奏をしているし、作曲をすることもある。大学で教えてもいるし、講演会やテレビに出演して話すこともあるし、本も書いている。本人も「~~になる」と決めてこうなったのではなく、社会に少しでもインパクトを与えたい、貢献したいと得意を磨き、目の前のできることをまだ積み重ねている過程が今なのだと思います。

それが「名詞」にはできない「動詞」の行動になっているのでしょう。

「社会を変えよう」と言っても「世界で活躍しなきゃ」と大げさに考える必要はないのです。世界196ヵ国にMake an impactする必要はなくて、まずは自分の知っている世界で小さなインパクトを起こす。そこからでいいのです。人は、名詞を目指すのではなく、動詞として生きていく。これを子育てをするうえで心に刻んでおけば、お子さんの未来は限りなく開けていくはずです。

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