塾に通えば志望校に合格できるわけではない

今の時代、中学受験に塾は不可欠だ。そして多くの場合、受験のノウハウが詰まっている大手進学塾を利用する。だが、当然のことだが、大手進学塾に通いさえすれば、みんながみんな、成績がぐんぐん上がり、志望校に合格できるというわけではない。

大手進学塾では、「スピーディーに鮮やかに解くことがいい」と教える講師は少なくない。そのため、「いかにすばやく解くための公式を見つけられるか」といった勉強に走りがちだ。すると、問題文をよく読まずに、数行読んだだけで、「あっ、この出だしは○○算で解く問題だ」と先走ったり、式を書かずに暗算で答えようとしたりする子が出てくる。

しかし、人間のワーキングメモリーには限度がある。暗算に暗算を重ねていると、途中で数字を忘れたり、間違えたりすることが起きる。早く解こうとするばかりに、雑な解き方になってしまうのだ。

算数の問題を解こうとしている手元
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「2時間の授業でたったこれだけしか教えていないのか」

また、大学受験で成功した高学歴親に多いのが、とにかくたくさんの問題を素早く解くことがいいと思い込んでいること。そういう親の子供は「あれもやれ、これもやれ」とたくさんの課題を与えられるため、常に焦りながら解く習慣がついてしまっている。焦って解こうとするから、雑になるし、ミスも多くなる。

そういう子には、とにかく「焦らなくていいんだよ。ゆっくり考えてごらん」と、手を動かしながら丁寧に考えるという、正しい勉強のやり方を教えている。すると、ほとんどの子に改善が見られるようになる。ところが、親からは「2時間の授業でたったこれだけしか教えていないのか」と文句を言われてしまう。たくさん解くことが勉強だと思い込んでいる親は、思っている以上に多い。