「アメリカ支援派」が減ると日本にも打撃

②他のG7諸国との協調体制にひびが入る危険性

大統領就任後、パリ協定から脱退したように地球温暖化対策には批判的。「America First」の名の下に保護主義に走り、安全保障や経済安全保障でも協調体制に亀裂が入る可能性がある。

③ウクライナ支援を継続しない危険性

バイデン政権のウクライナ支援を批判し、「自分なら1日で戦争を止められる」と豪語してきたトランプ氏。就任早々、ロシアのプーチン大統領と水面下で手を握る「自分勝手外交」に走りかねない懸念がある。

④何をやるか予見不可能という危険性

トランプ政権誕生の最大のリスクは、トランプ氏自身が何をやるか予見しにくい点。思いつきでの言動は、G7各国やグローバルサウスと呼ばれる国々との関係を壊しかねない。

欧州のシンクタンク、ECFR(欧州外交問題評議会)が4月に実施した世論調査では、アメリカと中国が台湾をめぐって衝突した場合、「アメリカを支援する」と答えた人の割合は、ドイツで23%、フランスでも24%にすぎなかった。

バイデン政権下ですらそうなのだ。トランプ氏に代われば、欧州で疑米派や嫌米派が増えるのは必至で、アメリカと同盟関係を最優先する日本も、安全保障や経済安全保障、あるいは気候変動などの分野で欧州各国の理解と支援が得にくくなる可能性がある。

台湾総統選に3つの政党から有力者が出馬

(3)三つどもえの台湾総統選。だれが勝っても残る台湾有事のリスク

3つ目のリスクは、対中政策が最大の焦点となる台湾総統選挙だ。台湾では、来年1月13日、総統選挙が実施される。任期4年の総統は憲法上3選を認められておらず、現在2期目の民進党・蔡英文総統は出馬できない。

総統選挙には、与党・民進党から、中国が「台湾独立派」として強く警戒する副総統の頼清徳氏(63)、対中融和路線を取る最大野党・国民党からは、新北市長の侯友宜氏(66)の出馬が決まった。さらに第三政治勢力の台湾民衆党から、前台北市長の柯文哲氏(63)が出馬を決め、まさに三つどもえの構図となっている。

まだ3候補の公約が出そろっていないため断定は難しいが、筆者はだれが総統になっても台湾有事の可能性は十分残ると考えている。簡単に整理しておく。