北朝鮮によるミサイル発射が相次いでいる。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「沖縄にはミサイル攻撃から防護できる建物が少なく、国防の甘さが露呈した。北朝鮮だけでなく、中国による台湾侵攻のリスクも直面しており、急いで備える必要がある」という――。
2019年6月20日、平壌で開かれた中朝首脳会談で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記(右)と中国の習近平主席が握手。
写真=KCNA VIA KNS/AFP/時事通信フォト
2019年6月20日、平壌で開かれた中朝首脳会談で、北朝鮮の金正恩総書記(右)と中国の習近平主席が握手

対中国・北朝鮮で日本が直面する3つのリスク

北朝鮮や中国に関する報道を見聞きしない日はない。それでもおそらく国民の多くは「差し迫った問題ではない」「物価高騰とかマイナンバーカードをめぐるトラブルのほうが身近な問題」と感じているのではないだろうか。

しかし、2021年1月以降、金正恩朝鮮労働党総書記の号令の下、「国防5カ年計画」を着実に実行しミサイルの精度を格段に向上させている北朝鮮、そして近ごろは、沖縄県周辺の海域だけでなく、鹿児島県の奄美群島周辺まで偵察の対象にしている中国の動きにも目を向けていただきたい。

そして、それらに対処する政府の動きや、日本に影響を与える関係国の動向も、「今、そこにある危機」としてとらえていただけたら、と切に思う。なかでもこれから述べていく3つのリスクである。

ミサイルの危険も「自宅にいるしかなかった」

(1)北朝鮮の衛星打ち上げで露呈した日本の備えのリスク

「解除されるまで自宅で待機していました。対ミサイルとなると避難する場所がないので、やはりシェルターのようなものが必要だと改めて感じました」

北朝鮮が、軍事偵察衛星を搭載した事実上の弾道ミサイル、「マンリギョン1号」を南方向に発射した5月31日、日本の最西端に位置する沖縄県与那国町(与那国島)の町議、嵩西茂則氏は、筆者の電話取材にこう答えた。

この日、午前6時28分ごろにミサイルが発射されたのを受けて、沖縄県の各自治体には、政府から、Jアラート(全国瞬時警報システム)やエムネット(緊急情報ネットワーク)が発出されたが、他の町民も「自宅にいるしかすべがなかった」と語る。

聞きなれない重低音のサイレンとともに、「近くの頑丈な建物や地下街などに避難してください」と呼びかけられても、人口1700人弱の小さな島にはそれに見合う建物などない。

「自宅や公民館への避難では意味がない」と考えた嵩西氏らは、今年2月9日、松野官房長官や浜田防衛相を訪ね、シェルターの早期設置を求める陳情書を手渡した。その際、両大臣から「関係省庁と調整し検討していく」という答えを引き出している。

しかし、政府が本腰を入れるかどうかは未知数だ。仮にシェルター建設にゴーサインが出たとしても、完成するまでには数年を要する。これでは危機に対処できない。