広告がクリックされなくなってしまう
実はグーグルがかねてより噂されていたバードをなかなか公開しなかったのには、大きな理由が考えられます。
チャットGPTや新しいビングを利用したことがある人ならわかると思いますが、検索窓に質問や要望などを入力すると、チャットGPTならデータベースを検索して、それに適する回答を表示してくれます。あるいは新しいビングでは、チャットGPTのデータベースとともにネット上の情報を検索し、やはりユーザーの質問に最適な回答を表示してくれます。
対話型AIだけに、回答の上にさらに質問の候補も表示され、この質問を次々とクリックしていくだけで、かなり的確な回答が得られてしまいます。
グーグル検索上に、同じような対話型AIを搭載したらどうでしょう。これまでは検索を行い、ヒットしたサイトや広告をクリックすることで、ユーザーは適するサイトを訪れることができました。
ところが対話型AIでは、ユーザーは広告をクリックしなくても回答が得られてしまうのです。広告収入に依存しているグーグルは、これでは屋台骨の広告収入に大きな影響が出てきます。だからこそ、検索に対話型AIを導入することをためらったのではないでしょうか。
しかし、チャットGPTや新しいビングの動きからか、あるいはAI時代の到来を見据えたのか、グーグルも早々に対話型AIバードの導入に踏み切ったのでしょう。
わずかな遅れが、先行者利益を逃すことは、グーグルも百も承知のはずです。グーグルならこの問題を何とか解決し、対話型AIをうまく駆使した新しい検索サービスを提供してくれるのではないでしょうか。
「反トラスト法」で米司法省に提訴された
「出る杭は打たれる」というのは世の常ですが、創業時から圧倒的な速度を誇った検索エンジンや、グーグル・アップスのような本格的なクラウドサービス、そしてアドワーズという広告サービスなど、よくも悪くもグーグルは誕生時からテック業界の中でも“出る杭”でした。
その出る杭が打たれたのが、23年1月のアメリカ司法省による提訴でしょう。米司法省は、グーグルがデジタル広告で支配力を乱用し、反トラスト法に抵触していると提訴したのです。さらに、同社の広告管理プラットフォームの一部を売却するよう命じています。
反トラスト法というのは、日本でいえば独占禁止法にあたるもので、グーグルがデジタル広告分野で独占的な営業をしている可能性があるため、ネット広告の一部を切り離せ、というのです。
グーグルの利益の根幹は、広告事業でした。この提訴による裁判の行方によっては、同社のビジネスモデルの根幹をも揺るがす事態になりかねません。