検索を「対話型AIで済ませる」という人が出現
ところが、チャットGPTの出現によってこの分野が現在激変しようとしています。
チャットGPTというのは、人工知能型チャットボット、つまりユーザーの質問にAIを駆使して自動的に答えを返してくれる自動応答機能・サービスのことです。あるいは、「対話型AI」などとも呼ばれています。
チャットGPTそのものは、22年11月にオープンAI(OpenAI)がサービスを開始したものです。以後、わずか1週間でアクティブユーザー数が100万人を突破し、その後2カ月で月間アクティブユーザー数が1億人を突破するという、驚異的なブームを巻き起こしています。
実は、マイクロソフトが提供している検索サービスのビングは、23年2月になってこのチャットGPTをビングに盛り込み、「新しいビング」としてサービスを開始したのです。新しいビングは、マイクロソフトのウェブブラウザ・エッジ(Edge)でのみ利用でき、検索を行うと、通常の検索結果とともにチャットGPTを利用した自動応答が表示されるようになっています。
チャットGPTを利用しなくても、ビングだけで検索もAIを利用した対話も、両方が利用できるのです。
対話型AIを搭載した新しいビングの登場で、検索はもうすべてビングで済ませてしまう、といったユーザーさえ出てきています。チャットGPTについては、第6章で詳しく解説しますが、ビングがこの対話型AIを搭載したことで、グーグルに大きな変化が出てきています。
ビングがグーグルのシェアを奪うと予想できる
ネット検索の分野では、これまでグーグルが圧倒的なシェアを握っていました。インターネット上のさまざまなウェブトラフィックの解析を行っているスタットカウンター(StatCounter)によれば、23年3月現在、検索エンジンのシェアはグーグルが全体の93.3%と圧倒的で、続いてビングの2.81%、バイドゥ(Baidu)の0.45%となっています(図表3)。
ところが新しいビングの登場で、グーグルの独壇場が侵されようとしているのです。新しいビングはまだ出たばかりで、その伸びはまだ数字に表れてきてはいませんが、ゆくゆくはグーグルの後塵を拝していたビングが、グーグルのシェアを奪い始めることも予想できるのです。
もちろん、グーグルも手をこまねいているわけではありません。23年3月末、グーグルは会話型AIサービス「バード(Bard、吟遊詩人という意味)」をアメリカ、イギリスで一般公開しました。かねてより噂されていたサービスで、グーグル検索と連動する機能や複数の回答候補を表示してくれます(図表4)。
さらに5月の「グーグルI/O」で、日本語を含む40超の言語で提供すると発表。直後から日本語でもバードが利用できるようになりました。