ブランディングは、あくまで継続性を強化する手段
ここで注意していただきたいのは、これらの商品はブランディングだけで成功したわけではありません。共通しているのは、そもそも便益が強いプロダクトであるという点です。「極潤」も「男前豆腐」も、それぞれに強い便益がありました。
どんなプロダクトも、独自性が立っているだけでは「ギミック(単なる仕かけ)」に終わってしまいかねません。「男前豆腐」も、独自性の強さから最初は購入に結びつかなかった人もいるかもしれませんが、おいしさという便益があったために「一風変わっているけど、実際に食べたらおいしい豆腐」という口コミで話題になりました。そもそも便益がなければ、どれほど独自性を尖らせてもブランディングは成立しないのです。
繰り返しになりますが、ブランディングとは、お客さまが価値を見いだした便益と独自性とプロダクトの関係を強い記憶としてお客さまに残し、忘れられないように、また思いだしやすいようにして継続購買を最大化する手段です。つまり、ブランディングとは、あくまで継続性を強化する手段なのです。
便益と独自性がなければ、ブランディングは成功しない
顧客がプロダクトの便益と独自性に高い価値を見いだした結果、ブランディングはその継続性を強化する手段になりますが、プロダクトの価値そのものをつくりだすわけではありません。逆にいえば、お客さまがその便益と独自性に高い価値を見いだしていない限り、いくらブランディング的な投資をしても、売上や利益を上げることにはつながらないということです。
もちろんブランディングは重要です。重要ですが、あくまでブランディングの目的は、プロダクトの便益と独自性を思いだしてもらうために、ほかの商品と区別されることです。「ブランディング」の語源には諸説ありますが、そもそも牛などの家畜がほかの家のものと混ざって混同しないよう焼き印を押していたということからきているともいわれています。
つまり、ブランディングという言葉には「区別する」という意味以上のことはないということです。たとえば焼き印をつくってそれを押したら、それだけで特別な牛になるかといえば、そんなことはありませんよね。「ブランディングをしたら、モノが売れる」という発想は、それと似たようなものです。焼き印を押したからといって牛そのものに変化があるはずはないのに、一生懸命そればかりをやっているということです。