ヒット商品を生み出すためには、どうすればいいのだろうか。マーケターの西口一希さんは「ヒット商品には誰かが明確に求めている便益があり、簡単に代替されない独自性がある。こうしたインサイトを導きだすためには、実際の1人のお客さまにインタビューと仮説を繰り返すことが重要だ」という――。

※本稿は、西口一希『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

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「買う理由」を探るには、顧客1人ひとりを理解するしかない

お客さまの購買行動の裏にある心理や人を動かす隠れた心理(これを「インサイト」といいます)を探るために、私がもっとも大切にしているのは、具体的な1人のお客さまの理解です。私はそれを「N1分析」と呼んでいます。

1人のお客さまに対して、「その商品を知ったきっかけ」「その際に、どう感じたか」「なぜその商品を買ったのか」「なぜ購買を続けているのか」を時系列で掘り下げていく「N1分析」を行うことで、購買行動の裏にある深層心理を徹底的に理解するのです。

ただし、「1人のお客さまを分析してもプロダクトの便益と独自性を見極められない」という悩みも聞くことがあります。

もしも「N1分析」で便益と独自性を見極められないとしたら、インタビューでの掘り下げ方が足りないか、あるいはお客さま自身が自分の思いやニーズを言葉にできていないためかもしれません。

それでも、1人ひとりのお客さまに対するインタビューを、20人くらい行っていると、しだいに「こういうことがいいたいのかな」とわかるようになってきます。そのためには、インタビューの最中は頭の中をフル回転させながら仮説を考え続ける必要があります。「ひょっとすると、この人はこういう理由で商品を買っているんじゃないかな」とか、「いや、こういう理由かな」と常に仮説を考えながら話を聞くのです。

優秀なマーケターに共通する「洞察する力」

たとえば、食物繊維がたくさん入ったヨーグルトの新製品に関する「N1分析」のインタビューをしたところ、便秘薬を飲み続けている人がいたとしたら、「繊維質を摂るために大量の野菜を食べるのが大変だ」と感じているのかもしれません。だとすると、その人の本当のニーズは「お通じに効くものを、少量だけ口にしたい」ということになります。そうであるなら、繊維質たっぷりのヨーグルトはその便益に見合ったものになるはずです。

お客さまの言葉の端々から、無意識に望んでいることを推察しながら話を聞くことが重要です。こうした話をすると、「N1分析からお客さまのインサイトを導きだすなんて、マーケティングをはじめたばかりの自分には難しい」という人もいます。

結果を出すマーケターも、生まれたときから優秀なマーケターだったわけではありません。どんな人もお客さまの理解を繰り返し、たくさんの仮説から、「お客さまに価値を感じてもらえるものは何か」と考え続けてきたのです。「違った」「これじゃない」といった失敗を繰り返しているうちに、「あ、これだ!」とお客さまが求めているものを見つけられるようになっていく。そうした経験を繰り返すなかで、マーケティングのセンスといわれる「勘所」が磨かれていくのです。