200円でも負担があれば無意味な受診をしなくなる
②小額の自己負担で健康な子供の受診が減る
少額の自己負担は、健康な子供の受診率を低下させる。一方、病気の子供の月1回の受診を抑制することはない。つまりこの結果は、少額の自己負担が病院受診のためのスクリーニング装置として機能し、より医療が必要な患者に医療資源を配分するのに役立つことを示唆している。
③小額の自己負担により不適切な抗生剤使用が減る
ゼロ価格が抗生剤の不適切な使用を大幅に増加させ、通院1回200円という低い自己負担でも不適切使用を18.3%も減少することが明らかとなった。
④医療費無償化には将来の健康上のメリットはない
小児期の助成金受給は、青年期の医療利用や健康状態に明確な利益をもたらさない可能性が高いことがわかった。費用負担を無料にするほどの手厚い補助金を追加しても、大きな健康上のメリットはないということになる。
まとめると、子供の医療費を完全無料化しても健康には役に立たない無駄な医療が増えるだけであり、将来的なメリットもなく、むしろ不適切な抗生剤使用を増やしてしまう悪影響すらある、というわけだ。そして、それは通院1回たった200円の負担をするだけで、ある程度、防ぐことができるのである。
子供たちは将来その何倍もの公費負担を課される
しかし、医療的には無駄であったとしても、通院1回200円すら無料化して助成することは子供や子育て世代への支援となるだろうか。
医療費の自己負担以外は保険料と税金による負担である。その保険料、税金は誰が払うことになるか。それは助成を受けた当の子供たちが将来にわたって引き受けることになる。医療上メリットのない受診のための、たった200円を無料化する利益を享受するために、その何倍もの公費負担分を将来の自分に課すことになる。これは本当に支援だろうか。目先の200円にとらわれて大金を失う結果になるのではないか。
ただし一点補足しておくと、うつ病、ADHD、タバコ、肥満などに対する医療など、価値の高い医療も1回200円の負担で受診が10%減少してしまうこともわかった。この点には留意が必要だが、価値の高い医療のみを選択的に無料化する、という方法でより効率的な医療資源配分は可能とも指摘されている。