ユダヤ人を迫害していたナチスドイツにおいて、ユダヤ人はどのような生活を送っていたのか。筑波大学教授の岡典子さんの著書『沈黙の勇者たち』(新潮選書)より、クラカウアー夫妻の例を紹介しよう――。

ベルリンのゲシュタポ[写真=連邦公文書館/Aktuelle-Bilder-Centrale、Georg Pahl(Bild 102)/CC-BY-SA-3.0-DE/Wikimedia Commons]
夫は重い荷物運び、妻は一日中ジャガイモむき
マックス・クラカウアーは、ナチスが台頭する以前、ライプツィヒで映画配信会社を経営していた。1918年、30歳で小さな会社を起こして以来、自分の会社を誰もが知る大企業へと成長させることが彼の目標だった。
1932年、彼は飛躍のチャンスを掴んだ。前年にアメリカで製作されたチャールズ・チャップリンの映画『街の灯』のドイツでの放映権を25万ドルで買い取ったのである。だが同時に、これはクラカウアーにとって苦難の始まりでもあった。チャップリンを共産主義のユダヤ人とみなしていたナチスが、上映に強い不快感を示したからである。
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