勤務評定面接のありかたは、評価される側の社員のコミュニケーション・スキルにも大いに左右される。往々にして、社員はこのことを忘れがちだ。自分の要望を効果的に伝えるためには、それを実現するための提案も考えておく必要がある。

経営管理の本や雑誌には、社員の勤務評定面接を効果的に行いたいと思っている企業幹部のためのアドバイスがあふれている。お定まりのアドバイスは、「評価面接では明確な期待と目標を設定せよ。だが、優れた仕事を褒めることや社員の関心事をしっかり聞くことも忘れてはならない」である。

幹部のこうした心がけにもかかわらず、多くの調査で、社員はひどく惨めな気分でいるという結果が出ているのはなぜなのか。たとえば、タワーズ・ペリンが1004社の1100人の社員に対して行った最近の調査によれば、回答者の3分の1が、自分の仕事について「きわめて否定的に」感じており、職場で疲れ果て、困惑し、支援が不足していると感じていた。

しかしそれは、マネジャーの評価面接のやり方がまずいためではない。

評価面接がうまくいかないのは、自分の関心事を明確に伝え、現状を変えるための提案を行い、自分の要望を満たすことで組織にどのようなメリットがあるかを説明するスキル──評価面接で企業が最重要視すべきコミュニケーション・スキル──に欠ける社員があまりにも多いからだ、とコンサルタントのビバリー・ケイは言う。

「企業は社員意識調査を行って、それから人事部やマネジャーに『さあ、これを解決してくれ』と言うだけだ」と、シャロン・ジョーダン=エバンスとの共著、『Love It, Don't Leave It: 26 Ways to Get What You Want at Work(職場を愛せよ/邦訳なし)』(2003年)を先ごろ上梓したケイは語る。

「職場満足は双方向の作業なのだ。それはリーダーやマネジャーの仕事だが、同時に社員の側からの提案や努力も欠かせない」

社員リテンションの専門家としてフォーチュン500社企業にコンサルタント・サービスを提供しているケイは、最近400人の転職者に対する調査を行って、彼らが前の会社を辞めた理由を調べた。それから彼らの元の上司を訪ねて、それぞれの部下が挙げた退職の理由を伝えた。「上司たちはほぼ例外なくこう言った。『なぜ私に言ってくれなかったのか。知っていたら、何とかできただろうに』」。