「日本はいい国」と実感するのは、中国人も同じ
「日本は食事がおいしいというだけでなく、すべての面において便利で快適、町が小さくてコンパクト。たとえ言葉がわからなくても、公共交通機関の標識が親切なので、どこにでも1人で行くことができるし、治安もいい。同じ東洋人なので、親近感もあるし、自分が外国人という感じがしない。地方に行っても、どこにでもコンビニやトイレがあり、生活しやすい」
昨年、コロナ禍で仕事に行き詰まりを感じ、10年近く住んだ東京を離れ、中国の地方都市に帰国した友人がいた。その人も今春、「日本に住んでいるときには、日本社会の穏やかさやおいしい空気を当たり前に手に入るものだと思っていたし、ありがたみも感じなかったが、今、中国に帰ってみて、貴重な経験だった、と感じる。またいつの日か、チャンスをつかんで日本に戻りたい」というメッセージを送ってきて、胸に迫るものがあった。
日本人にとって、日本での生活は当たり前で、とくに恵まれていると感じさせられる機会は少ないが、一度でも海外生活を送った経験のある人なら、日本はいい国だと感じさせられるのではないだろうか。彼らもそれと同じことを感じているようだ。年を取って、そういう気持ちがいっそう強くなることは、ある意味で当然だ。
とくに健康面で不安を感じている人は、よりそう感じる。だからこそ、世界のどこよりも日本を選び、日本に舞い戻ってくることを切望するのだろう。
中国人の「リタイア日本移住」が増える?
そうしたこともあるからか、老後は日本の田舎で暮らしたい、という希望を持つ人も多い。筆者の知人の中には、日本の田舎をわざわざ選んで移住する人も少しずつ増えてきている。
彼らの共通点は60~70代で、子どもや親戚、友人の誰かが日本に住んでいるという点。ある30代の女性は東京の企業で働きつつ、日本の永住権を取得。都内にマンションを購入し、今後も日本に住み続ける予定だというが、数年前に、中国から両親が引っ越してきたと話していた。
その女性によると、両親はこれまで何度か来日した経験があり、日本を気に入っていた。一人娘と離れ離れで生活することが寂しく、老後の医療、生活の不安もあることから、娘を頼って来日。日本を「終の棲家」とすることに決めたという。だが、都内の狭いマンションでは息が詰まるし、空気も田舎のほうがよいため、埼玉県にある一戸建てを購入。庭先に家庭菜園を作り、野菜を育てながらのんびりと生活している、と話してくれた。
娘によれば「日本の郊外は、中国の郊外と違って、簡単に都心に出ることができるので便利だし、自然環境がいい。両親がそばにいてくれるので安心」と話していた。つまり、親子2世代の日本移住だ。冒頭の70代の男性もそうだが、「老後のことを考えたら、やはり日本がいちばん安定していて暮らしやすい」と考える中国人が、これからますます増えていくのではないか、と予感させられる。