警察署長も困惑「善人と悪人を見分けるのが困難」
2021年9月には新たな法律が施行され、正規の手段で銃を所持しているテキサス州住民のほとんどが、許可証や訓練なしに銃を携帯することが可能となった。CNNは、推進派が公共の場で「自分自身と家族の保身」に役立つと主張していると報じている。だがダラス警察のエディー・ガルシア署長は新法施行後、「銃を持った善人と銃を持った悪人」を見分けることが困難になったと困惑顔だ。
スタンフォード法科大学のジョン・ドノヒュー教授も同様に、米アトランティック誌への寄稿を通じ、銃規制の緩さを指摘している。
四半世紀にわたって銃と犯罪の関係を研究してきたというドノヒュー教授は、「多くのアメリカ人が銃の所有権の正当性を支持している」と指摘したうえで、これにより望ましくない結果が生まれていると論じている。
教授によると、FBIが18歳以上の55人の銃乱射犯を分析したところ、およそ3人に2人は成人後の前科がなかったという。アサルトライフル(軍の歩兵にも導入されている、移動しながら容易に射撃できる軽量の銃)をたやすく購入できる環境が、良識ある人間を乱射犯に変えていると教授は論じる。
乱射事件は身近な出来事になってしまった…
乱射事件は短期間に相次いでいる。住宅街での事件から約1週間後には、冒頭のモールでの事件が発生した。120以上の店舗が集まるテキサス州のアレン・プレミアム・アウトレットで、のどかな昼下がり発生した悲劇だ。
ニューヨーク・タイムズ紙は、大きな発砲音が響くなか、人々が避難所に逃げ込んだり駐車場に身を隠したりといった大混乱に陥ったと報じている。
事件の日、16歳の娘とモール内のバーガー店で食事を摂っていたという父親にとって、銃乱射事件はごく身近な出来事だったようだ。同紙に対し、銃声を耳にした瞬間、「(乱射だと)すぐに直感しました」と語っている。
「愛する娘を護ろうとカウンターの下に押し込みましたが、そうするあいだにも(銃声は)どんどん大きくなります。まさに奴がすぐそこまで来ているようでした」と緊迫する現場を振り返っている。父親はまた、「歩道には奴が撃った人々の死体が見えました」とも生々しい状況を語った。
別の36歳男性は、両親とショッピングを楽しんでいる最中に事件に遭遇した。逃げ出す人々でモール内が混乱状態となるなか、男性は店舗の奥に逃げ込んだという。警察の部隊が到着するまで45分間ほど、両親とともに息を潜めてやり過ごした。
男性は、無事店の外へと出た時、店舗のショーウインドウが粉砕されていたのを覚えているという。ニューヨーク・タイムズ紙に対し、「アメリカ人として私たちは、こうした事態に慣れています。どうすればよいか皆知っていますから」と事もなげに語っている。
事件の犯人は、別任務で偶然現場に居合わせた警察官によって射殺された。犯人を含め計9人が命を落とす惨事となった。