近隣住民の苦情に逆ギレ、5人を射殺した
乱射事件はアメリカ各地で場所を選ばず発生している。モールでの銃撃事件から8日前の4月28日、住宅街で別の乱射事件が起きていた。同じテキサス州内の、ヒューストン北部の田舎町での出来事だ。
AP通信は、町に住むフランシスコ・オロペサという38歳の男が、銃の乱射で隣人5人を殺害後に逃走したと報じている。
記事によるとオロペサ容疑者は、自宅の庭で銃撃の練習をしていた。時刻は深夜11時を回っていたようだ。
隣家に住む男性は銃声に頭を抱えていた。男性には生後1カ月の息子がおり、銃声で息子は泣き止まず、なかなか寝付けなかった。男性は他2人とオロペサ容疑者の家を訪れ、庭で銃を放つことは控えてもらえないかと「礼儀正しく」頼んだ。
銃声を諫められ、容疑者は激高した。恐怖を感じたガルシアさんたち一家は警察に5回も通報したが、いま警官が向かっていると繰り返し告げられるだけだったという。そうしているあいだにも容疑者は銃に弾を込め、男性が住む家にずかずかと歩み寄ってくる。当時家には教会の友人たちが集っており、中には15人ほどがいたようだ。
男性は妻に、奥に隠れているよう告げた。それでも友人を護りたい妻は、「女性の私を撃つことはないと思う」と気丈だったという。ついにオロペサ容疑者が家の玄関口にまで達し、発砲をはじめた。妻は銃弾を受け、玄関先で倒れた。まだ25歳の彼女は、事件の最初の犠牲者となった。
緩すぎる銃規制が「銃乱射事件の震源地」になっている
事件で男性は、妻と9歳になる長男を失った。ほか、子供たちをかばおうとした2人の女性などが命を落とし、計5人が死亡する痛ましい事件となった。
AP通信は、「ヒューストン北部のこの田舎町で、人々がストレス発散に銃を放つことに住人たちは慣れている」と述べ、銃は町の日常風景の一部だと指摘している。警察は大規模な捜索を展開したが、地元紙ヒューストン・クロニクルによると、逃走する容疑者の身柄確保までに4日を要した。
事件の発生数には、地域による偏りも大きい。これを念頭に置くと、州法によっては緩すぎる銃規制が問題を招いているともいえそうだ。
米CNNは、過去8年間で最悪の死者数を出した10件の乱射事件のうち、半数がテキサス州内で発生していると報じている。テキサスは「ほとんどの家庭が銃を所有」しており、「銃乱射事件の震源地」になっているとの指摘だ。
調査によると、およそ60%の家庭で少なくとも1丁を備えているという。また、米疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、テキサスでは全米平均を上回る速度で状況が悪化している。2021年までの9年間での銃による殺人事件の増加率は、全米平均で73%増とすでに高い数字となっているのに対し、テキサス州ではさらに高い90%を記録した。