各宗教のトップに、英国国教会の長になったことを宣言

前の女王と違って若さや新鮮さはないにしても、彼は彼なりの思いを戴冠式に込めている。

若い頃から多様な人種の許容、ジェンダー平等、環境問題、貧しい若者の支援などに尽力してきた国王は、特にダイバーシティの精神を式に反映していたように思う。

「今回は英国国教会の長になったことを、カトリック、正教会、イスラム教、ヒンズー教、シーク教、仏教など世界のあらゆる宗教のトップに知らしめることが大きな目的だったと思います。このように多様性に富み宗教色の強い戴冠式を行なっているのは、ヨーロッパの王室ではイギリスだけです。前回の女王の戴冠式でも招かれている宗教関係者は英国国教会の僧だけでした」

とは英国在住30年、イギリス全土とロンドンの公認ガイドの塩田まみさんは言う。

2023年5月6日・チャールズ王の戴冠式と書かれた旗
筆者撮影

美人政治家、Perfect Kateらに注目が集まる

国王は世間が思うよりも志の高い人だが、偉大な母やダイアナという強烈な個性を持った人々の陰に隠れていた。今回も結局、自分が主人公であるのに、魅力的なキャラクターの存在が耳目を集めた。

例えば、ブルーグリーンのコンシャスなドレスに身を包み、長さ121cmもある宝剣を女性で初めて捧げ持ったのは、保守党下院代表のペニー・モーダント枢密院議長。

フランスの女優カトリーヌ・ドヌーブにそっくりの美貌の持ち主で、ビシッと背筋を伸ばし、微動だにせず立っていた姿が数々のメディアを飾った。「あの美女は誰?」と人々は噂した。

「昨年、エリザベス女王が最後に謁見したリズ・トラス首相の後任の保守党党首選に破れ、ペニーさんは首相になれませんでした。でも、そのおかげで今回の大役が回ってきたと言っていいかもしれません(笑)」(前出・塩田さん)

さらに人気をさらったといえば、ウィリアム皇太子夫妻一家だ。Perfect Kate(完璧なケイト)ことキャサリン妃が馬車の中から手を振る美しい姿は神がかっていた。加えて、長男のジョージ王子が国王のトレーンの裾を持つ最年少ページボーイを務め、賢くお行儀の良い長女シャーロット王女とやんちゃな末っ子ルイ王子のかわいさと言ったらない。国王の妹のアン王女が軍服を身に着け、王族の中ではただ一人、パレードに馬に乗って参加するという、安定の格好よさ!

悩みのタネである国王の次男・ハリー王子は、一応列席はしたが、式後にさっさとアメリカに帰国していった。問題を起こさず、妻のメーガン妃の元に帰ったことで国王はひと安心したかもしれない。