女性の自慰行為はタブー視されている
【村瀬】クリトリスを「おしっこが出る尿道口と同じ」ものと思っている40代女性は、私が知っているだけでも何人もいて、社会的にも少なくないでしょう。それで性について、ましてセルフプレジャーについては口にもできないと思っています。
いまの若い世代も「セックスについては友だちと話せても、セルフプレジャーのことは話せない」という声が多いです。そもそもセルフプレジャーの経験率を見ると、男性はセックスの経験があってもなくても9割以上ですが、女性はそれよりずっと少ない。しかもセックスを経験したあとに始める人が多いんですね。男性はセックスの初体験の前からセルフプレジャーを始めています。
私は女子大で性教育、セクソロジー(性科学)の授業を20年以上担当していましたが、その最初のころの学生がいまの50歳前後です。当時は、自分の性器を触ってみようと女子学生に言うには勇気がいりました。セクハラだと言われるんじゃないかと思ってね。
「自分の欲求を隠せ」から変化の兆しも
【田嶋】考えてみれば、ホント、おかしな話ですよね。自分の体なのに見ても触れてもいけないなんて。長いこと無意識にそう思わされていたなんて。
【村瀬】そのうち私も度胸がついて「自分が触ったこともないところに、人のペニスを挿れるな!」などと教えてましたね。
【田嶋】それを聞いてハッとした学生は多かったはずですよ。セルフプレジャーをしていると自分から言えないのは、それが自分の欲求から始まっているからでしょう。セックスだと「男性に求められたから」という言い訳が立つけど、それがない。いかに、女性が主体的に欲することが“ない”ことにされてきたかってことですよね。
ただ2022年11月の新聞に幼い女の子のセルフプレジャーをどうしたものかという記事が載っていて、世の中、少し動いていると感じました。(以下略)