日本はセックスの頻度も満足度も世界最下位
【村瀬】はい、その歪みが結局はセックスにも表れるんですよ。少し古いデータなのですが、イギリスのコンドームメーカーが世界各国でセックスの頻度と満足度を調査したところ、日本は頻度も満足度も最下位だった。世界一セックスしていないし、しても満足できていない国だということがわかったんです。
【田嶋】さもありなん、といった感じですね。それはどうしてだとお考えですか?
【村瀬】日本における「セックス」とは、男性が女性を支配する行為になっているからです。長いあいだそうでしたし、残念ながらいまもさほど変わっていません。そのうえ、メディアにはそれを強化するような情報があふれています。
本来ならセックスは、「快楽と共生」を核にしたものです。それが感じられるセックスは満足度が高いですし、頻繁にしたくなるでしょう。でも日本ではセックスが互いの楽しみではなく、攻撃と支配の手段になっている。これでは女性がつらいのは当然のことですが、男性も実は楽しくないんです。それで世界最下位という結果になっている。
主導権は男性にあり、女性は従うしかない
【田嶋】日常生活における男性中心の女性差別的な状況が男女の性生活にも如実に反映されているということですね。私が聞く限りの話ですが、セックスの最中、男性に「この体位は好まない」「もっとこうしてくれたほうが気持ちいい」といったことをはっきり言える女性はとても少ないのだとか。主導権は男性だけにあって、女性はつらいのを耐えているか、演技をして早く終わらせようとしている……これっていまでもそうなんでしょうか。
【村瀬】私たちの世代では大半がそうだったと思いますし、いまの50代もそうしたセックスが多いでしょう。もっと若い世代も同じように見えますよ。言えない、というより、女性はそんなことを口にすべきではないし積極的であるべきではないとされているからですよね。これも性教育が貧困すぎたがゆえだと、私は思うのですよ。
学校での性教育は長らく、男性と女性は対等である、というところから出発せず、いきなり「女性は生理が始まると、妊娠する可能性があります」という話をします。それでいて、妊娠にいたるまでの過程は教えないという指導要領の“はどめ規定”がいまでもあります。
子どもたちはセックスについて学ぶ機会がないうえに、セックスは男性の能動性、攻撃性の上に成り立つものであるという情報ばかり巷にあふれていて、それらがとても刺激的なものだから、子どもはすぐに刷り込まれます。そして女性の身体や快感は置き去りにされてしまいます。