バブル崩壊時に行われた行政指導「総量規制」

それでも不動産価格が下がるリスクはある。金融緩和が当分続く中、不動産にお金が流れるのを口先で介入することはできる。過去にも、バブル崩壊の際に「総量規制」という行政指導を当時の大蔵省が行い、不動産価格は急落した。これを行うとすると、現代では金融庁の役割になる。以前の大蔵省は財務省と金融庁に省庁再編されているからだ。令和版「総量規制」が行われるには、「自宅が高過ぎて買えない」という悲痛な声が大きくならないと起きないと考えられるが、そうしたメディア報道が増えてきたので注意を要する状況にはなってきた。

とはいえ、不動産価格の下落を期待する記事も金融緩和中のこの10年間にも何度もあった。「消費税率が10%になったら下がる」とか、「東京オリンピックが終われば下がる」とかまことしやかに言われた。しかし、これには全く根拠がない。過去に消費税率が上がる前後で持ち家需要の乱高下があったが、この教訓から駆け込み需要とその反動減を和らげる十分な税制が行われているし、オリンピック特需と建築単価はある程度関係はあるが、建て替え需要が旺盛なほど古いストックが多い日本ではその影響はかなり緩和されてしまっている。そんなことより、用地を購入する資金が不動産事業者に大量に流れる構図が変わらなければ、用地価格が下落することはないことくらい不動産金融の専門家の間では当たり前である。

2020年東京夏季オリンピック
写真=iStock.com/winhorse
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買い手が少ない物件は手遅れになる可能性がある

不動産価格の一本調子の上がり方から、そろそろ不動産の売却を考えているなら、まずはタイミングを間違わないことだ。不動産価格が下がるには「令和版総量規制」の可能性が最も高いので、その機運を感じるだけのメディア記事が増えるまで売り急ぐ必要性はない。

そんな状況でも売りやすい物件とそうでないものがある。売りやすいものはストックの7割を占める3LDKのファミリータイプで、それ以外は買い手が少ない分売りにくくなる。需要が減退していく中、買い手が少ない物件は価格が下がり始める前に早めに対応しないと手遅れで全く売れなくなる可能性がある。

同様にして、需要が多い都心は安泰だが、郊外や地方はリスクが高い。いつの時代にも不動産価格高騰の最終局面ではセカンドハウス的なリゾートマンションが出現し、価格が下がり始めると自宅需要でないために下げ幅が非常に大きくなる。こうしたリスク管理は今のうちから考えた方がいいだろう。

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