豊洲のマンションは上海の「25m2ワンルーム」と同じ
日本で不動産を買える中国人富裕層とはどのような人々か。
杉原氏によると、「1億~3億円の現金をポーンと出せる人、1棟買いができる人です。(22年の)円安傾向で、彼らにとって日本の不動産の安さが際立ちました。まさにバーゲンセール状態。何しろ、日本のビル1棟は上海のマンション1室分の値段ですから」という。
筆者は、このほど上梓した『中国人が日本を買う理由』(日経プレミアシリーズ)のプロローグで、豊洲のマンションを7000万円で購入した中国人男性について紹介しているが、上海在住の別の友人にその話をしたところ、「それはとても安い」と語っていた。
友人の話では、上海の中心部なら1平方メートルで平均7万~8万元(約133万~152万円)。7000万円で単純計算すると35平方メートル分になる。中国では外廊下など共用部分も入れて計算するため、7000万円なら、実質25平方メートルのワンルームマンションくらいしか買えないことになるからだ。
杉原氏はいう。
「日本の不動産は安いので、ホテルや旅館を買いたいという人もいます。一般のマンションを買うよりも利回りがいいし、ビジネスとして広がりがあるからです。私のお客さんに人気なのは、富士山周辺の温泉ホテル、旅館、リゾート施設、ゴルフ場など。富士山は中国でも知名度が高く、ブランド力があり、東京からも近いので、問い合わせも多いです」
日本の温泉地を“VIP専用”として買う中国人たち
「ただし、落とし穴もあります。古い温泉ホテルや旅館は、温泉の元栓が壊れることがたまにあります。修繕しなければ使えないなど、かえって高くつく場合も……。ですので、古い物件には手を出さないという人もいますね」
温泉ホテルをビジネス用ではなく自身や家族、ビジネスのために買いたいという顧客もいる。自分のプライベートクラブ(中国語で会所=ホイスオ)として改装し、中国から取引先が来たときに使いたいというのだ。
中国では富裕層が利用する「会所」が流行っている。一般の人にはその存在が知られず、VIPだけしか利用できない、特別感や高級感があるところ、というイメージだ。
「河口湖にある知り合いの会所は野生の鹿が庭にくるなど自然が豊かで、富士山が見える、ゆったりしたところです。そこにお客様を案内すると、皆、自尊心をくすぐられて、大喜びします。
日本人の管理人が常駐していますが、お客様を招いたときは、東京の有名な和食料理店の板前やミシュランの星つきレストランのシェフをわざわざ呼び寄せることもあります」
「プライベートな空間で、最高級の懐石料理などをサービスしてもらい、日本のワインや日本酒をたしなみつつ、商談や私的な会話をする。至福の時間だと喜ばれています」(杉原氏)