現金は紙切れに変わってしまうかもしれないが…

政府の政策により、90年代初頭まで自らの不動産を所有できなかった中国人にとって、何かを買う=モノを持つ、という認識だ。そうした“習性”は日本に住むA氏にも備わっているようだ。中国に住む両親は不動産も所有するが、「この先、何があるかわからない」とA氏は言う。他の多くの中国人から同様の話を聞いた。

中国の医療体制の脆弱ぜいじゃくさ、医療の構造的問題も、海外で不動産購入に走ることと関係がある。日本に家を持ち、永住権や国籍を取得して、日本の医療を受けながら老後を過ごせたら本当に心から安心だ、と語る中国人が多いのだ。中国で現金は、ある日突然紙切れに変わってしまうかもしれないが、日本の不動産ならばリスクは低い、と彼らは考える。

むろん、日本の不動産にも価格下落リスクはあるが、そこは「自分でじっくり不動産を研究し、注意するしかない」とA氏。現に、彼は約10年間の不動産投資で損をしたことは一度もなく、資産は増え続けている。

A氏にとって、日本は「第二の故郷」。日本が大好きで、今後も住み続けようと思っているので、そのためにも不動産を買い続けたいという。

中国人が感心した日本の不動産会社の気遣い

「私がメインで取引しているのは日本の中小の不動産会社、数社です。大手、中小とも日本の不動産会社はアフターケアがしっかりしていて、担当者も責任感があるので、私は日本の会社とつき合っています。

ある日、私が一人で物件を見に行ったとき、日本の不動産会社の担当者が『今日は、奥様はご一緒じゃないのですか。次は奥様と一緒にいらしてください』といったのです。

女性目線だとキッチンの位置、昼間の日当たり、ベランダの広さなど、細かいところに気がつくからで、後々揉めないためにも、物件は夫婦や家族と一緒に見ることがよいそうです。私はその話を聞いて、とても感心しました。

中国系不動産業者からは、こういった気遣いの言葉はあまり聞きません。中国系は売買のときの愛想はとてもいいのですが、アフターケアはあまりないので……。それに、担当者がすぐにやめたり、独立したりすることも多い。だから、私は日本の不動産会社とつき合っているのです」