次世代のキメラ抗原受容体T細胞療法とは
現在のキメラ抗原受容体T細胞療法は、患者さんのT細胞を改造する究極の個別化治療であり、薬と違って大量生産はできません。そのため薬価は高く、3000万円を超えます。しかし、2019年に保険適用となったので、高額療養費制度を利用すれば、患者さんの自己負担額は高くても数十万円以内におさまります。近年、日本の医療費は増大し続けていて、公的保険財政を圧迫するという問題はありますが、他の治療で助からない患者さんの命が救えるのは大きな福音です。
次世代のキメラ抗原受容体T細胞療法は、健康なドナーや多機能幹細胞由来のT細胞を使うというものなので、コストダウンが見込めます。患者さん由来のT細胞を使うのがオーダーメードの治療法だとすると、次世代はレディメードの治療法です(※4)。コストダウン以外にも、患者さんからT細胞を採取する必要がないので治療開始までの時間が短くなり、また、それまでのがん治療でT細胞が減った患者さんの治療もできるという利点があります。
今では、がんの治療法は「外科的切除」「抗がん剤治療」「放射線治療」に「免疫療法」を加えて四大治療法といっていいでしょう。免疫療法も含めて標準医療は進歩しています。高額な割にエビデンスが乏しい自費診療の治療を受けるより、標準医療を受けることを強くおすすめします。
※4 Ready-made CAR T Cells | Harvard Medical School