「女子だけのスペース」を求めない
以前ドイツ人の女友達とミュンヘンのデパートに行った時のことです。
ドイツでも、日本と同様に女性用トイレのほうが男性用トイレよりも混んでいます。女子トイレの前にできた長い行列に、その友達は「あっち(男性用トイレ)に入っちゃおうかな?」と言いました。
ドイツのデパートのトイレには、掃除などを担当しトイレの使用者からチップももらういわばトイレの番人のような人がいるのですが、彼らの多くはドイツ語があまり堪能ではない外国人です。
結局、女友達は「トイレ掃除の人をビックリさせちゃうとかわいそうだから」という理由から男子トイレには入らなかったのですが、もしも掃除の人がいなかったら、きっと入っていたことでしょう。
ドイツの女性は川沿いや公園で好きな時にトップレスで日焼けもするし、普段の生活でも特に女らしさを求められることもなく比較的自由に過ごしているので、それほど「女子だけのスペース」を求めない傾向があるようです。
もしかしたら「好きな時に好きなことができる」と、性別などにあまりこだわらなくなるのかもしれません。
性的マイノリティーへの差別はドイツにも存在する
ドイツにもトランスジェンダーに対する偏見はあります。トランスジェンダーの活動家であるJulia Monroさんはメディアに対して「トランス女性の私は、男性からも女性からも性的な質問をされることが多い。まるで私の存在が性的なことに限定されているみたいだ」と話しています。
2022年に発表されたドイツ連邦刑事局(Bundeskriminalamt)の統計によると、2020年に比べ翌2021年にはトランスジェンダーの人に対するヘイト・クライム(敵意に基づく犯罪)が67%も増えました。今まで犯罪の被害に遭っても声を上げることができなかったマイノリティーの人たちが被害を訴えるようになった背景もあるものの、ドイツの社会でトランスジェンダーの人がヘイトの対象になっているという事実は否定できません。
トランスミソジニーが問題になっているなかで、今年夏に「本人の表明だけで役所で性別を変えることができる法律」(Selbstbestimmungsgesetz)が施行されるわけですが、これを機にドイツの社会が少しずつ変わっていくことを期待する声も多いのです。