スポーツジムなどに設置されたサウナもいい例です。ドイツでは男女混浴であることが多く、老若男女が同じ空間で裸になって汗をかいています。日本人の感覚だと「異性の前で裸というのは恥ずかしくないのか?」と思いそうなものですが、ドイツ人の感覚でいえば、裸は人間の本来の姿であり、そもそもサウナで汗をかくのに男も女もない、性別は関係ないというのが一般的な考えです。

裸だからといって、それがすぐ性的な意味に結び付くわけではないのです。

男女別のトイレを作る必要がない

ドイツのトイレ事情を紹介しましょう。日本に比べて男女の垣根が低く、共有トイレは広く受け入れられています。

たとえば、ドイツの労働安全衛生関係法令の概要(Arbeitsstättenverordnung)では、職場のトイレについて「異なるスペースでのトイレ使用が不可能な場合のみ、男女のトイレを分ける必要がある」としています。

少し分かりにくい書き方ですが、要はジェンダーレストイレであっても「個室」が設けられていれば「異なるスペースでのトイレ使用が可能」であるため、特に男女の性別を分けたトイレを作る必要はないということです。

前述のドイツの一般均等待遇法(Allgemeines Gleichbehandlungsgesetz)により、誰一人取り残さないよう「誰でも使えるトイレ」を作ることがドイツでは推進されています。

法律の規定では「個室が3室までの場合、共同の洗面台が一つあればよい」とされているものの、プライバシーを保つためなるべく全ての個室に洗面台を設置することが望ましいとされています。

大学などのジェンダーレストイレの設置が話題になっているものの、駅など公共の場では予算などの関係もあり工事が進んでおらず昔ながらの男女別に分かれているトイレもまだまだ多いです。

でも前述の一般均等待遇法(Allgemeines Gleichbehandlungsgesetz)があるため、誰でも性的アイデンティティーに沿うほうのトイレを使用することが可能です。つまり「心は女性だけれど身体は男性」のトランス女性が女性用トイレを使うことに問題はありません。逆にそれを防止しようとするのは差別にあたります。