総論賛成、各論反対の日本人が多すぎる

日本も性的少数者に寄り添った社会に変わりつつあります。ただし「総論は賛成」。各論となるといまだに根強い反対の声があります。ジェンダーレストイレはその典型例だと思います。

日本ではジェンダーレストイレの話になると「女性の使用済み生理用品を持って帰る変態の男性がいるのではないか」「盗撮が増えるのではないか」といった懸念が上がるのが常となっています。

日本に住むドイツ人女性にこのことについて聞いてみたところ「使用済みの生理用品を持ち帰るのは異常だとは思うけれど、たとえ私の使用済みの生理用品を持ち帰ったとしても、だから何? 勝手にやれば? としか思わない」とのことでした。

盗撮のような許されない卑劣な行為にドイツの女性も嫌悪感を抱くものの、だからといって「トイレに異性が入ることについて断固反対」とはならないのが日本との大きな違いかもしれません。

なぜ日本人はジェンダーレストイレにこれほど反発するのか。これまで紹介した男女の垣根の高さは一つの理由でしょう。さらに言えば、「みんなが同じであるはずの場に、異質な人間は入るべきではない」という同質性を過度に重んじる日本人の心理が根底にあるように感じます。

日本の一般的な中学校や高校では「みんな制服を着て同じ格好」をしています。たとえ週末であっても、私服で学校内に入ることを許していない学校もあります。こういったことを即「トイレ問題」とつなげるのは尚早かもしれませんが、少なくとも日本でジェンダーレストイレがなかなか共感を得られない遠因にはなっているのではないかと思うのです。

トイレ問題で露見した偏見・差別の根深さ

もう一つは、無自覚的な偏見と差別にあると思うのです。ジェンダーレストイレに反対する人には「(トランス女性を含む身体的な)男性による性犯罪」を挙げる人がいます。

でも、これはそもそも前提に偏見が入っているのではないでしょうか。「日本に外国人をたくさん入れると犯罪が増える」という偏見と根は同じだと思います。日本に来る外国人の中には犯罪をする人もいますが、大多数はそうではありません。性犯罪に関しても「この属性の人だから危ない」と決めつけるのは性急です。

日本では表では「多様性」といいながら、裏ではマイノリティーの人に対して「申し訳なさそうに生きるべき」と考える人がまだまだ多いのではないでしょうか。

世界の先進国では「誰一人取り残さない」をモットーに性別の垣根はどんどん低くなっています。性的マイノリティーに牙を向けるのはいかがなものでしょうか。

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