「ホッキョクグマの群れが人間を襲う」ケースはある
また他紙でも次のような報道があった。
「現在、カナダの新聞各紙は、ラブラドールでの飢餓、シロクマ、そして人間同士の共食いの話は、単なるでっち上げだと報じている。真実かどうかもわからないままに書いた記事を、後で自ら否定するような連中は絞首刑だ」(The new North-west. August 13, 1886)
ホッキョクグマによる襲撃は本当にあったのか。
そもそも単独行動を好むクマが、数千頭もの大群となって集落を襲うことなどあり得るのだろうか。
2019年2月、ロシアの極北の集落にホッキョクグマの群れが居座り、住民が屋外に出られなくなったという事件をニューズウィーク日本版が「ホッキョクグマ50頭が村を襲撃、非常事態を発令」という見出しで報じている 。
記事によると、ロシア北東部にあるノバヤゼムリヤ列島の定住地、ベルーシャ・グバでは、50頭を超えるホッキョクグマが住宅やオフィスに侵入し、人を攻撃する例も確認されており、当局が非常事態宣言を発令したという。
「世界最大の獣害事件」の可能性
温暖化などによってエサ不足が深刻化し、ホッキョクグマが必要以上に人間の居住地に近づくようになっているとも言われる。
飢餓に駆られたホッキョクグマが極めて危険であることは、よく知られている。
冒険家植村直己も、ホッキョクグマに遭遇して生命の危険を感じたという体験を記録している。
犠牲者数が最大で数百名に達したという、ラブラドールでの惨劇は、果たして事実なのか。
一連の報道を総合すると、フェイクであった可能性もある。
しかし「数千頭」は大げさとしても、数十頭のホッキョクグマが群れをなして集落を襲撃するような事件が実際に起きた可能性は、ないとは言い切れないのではないか。